2013 Fiscal Year Research-status Report
合成化学的手法を用いた立体構造未解明天然物の構造決定
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24710250
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高村 浩由 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (70422798)
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Keywords | 有機化学 / 合成化学 / 天然物化学 / 立体化学 / 構造解明 |
Research Abstract |
生物活性を有する天然有機化合物の構造解明は極めて重要な研究課題である。構造解明は、構造活性相関に関する重要な知見を与え、活性発現部位の特定、分子プローブの設計、生体内標的分子の同定、作用機序の解明、さらには生物活性人工分子の創製へと研究展開が可能となるからである。本研究では、機器分析による構造決定が困難な生物活性天然物を研究対象とし、合成化学的手法を用いることで構造を解明することを目的とする。以下、本年度に得られた研究実績を記述する。 1. 分子量2,860を有するポリオール天然物シンビオジノライドの合成と構造解明について検討した。まず、天然物に対する分解反応により得られたC1-C13フラグメントについて検討を重ね、4つの候補化合物を立体発散的かつ選択的に合成した。さらに、合成品と分解生成物とのNMRデータの比較を行うことで、本フラグメントの立体構造を解明することができた。またこれと並行して、C79-C104フラグメントについても検討を行い、考え得るジアステレオマーを全て合成し、天然物とのNMRデータの詳細な比較を行うことで、その立体構造を解明することができた。 2. 前年度までに、サルコフィトノライドCの全合成および絶対立体配置の決定を完了している。本年度は合成したサルコフィトノライドCおよびその8-エピ体を用いて細胞毒性試験を行うことで、8位の立体化学と細胞毒性との相関を明らかにした。さらに、本全合成で用いた骨格構築法、すなわち渡環型閉環メタセシスを基盤とした合成法を駆使することで、サルコフィトノライドE, F, Hの全合成をそれぞれ完了することができた。今後は、他のサルコフィトノライド類の合成について検討するとともに、現在までに合成を完了した化合物を用いて、生物活性、具体的には細胞毒性やフジツボの付着阻害活性を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、シンビオジノライドのC1-C13フラグメントおよびC79-C104フラグメントの立体発散的合成、サルコフィトノライドE, F, Hの全合成を完了した。また、サルコフィトノライドCの立体化学と生物活性との相関に関する知見を得た。これらは当初予定していた以上の内容であり、研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も本年度同様、立体構造未解明天然物を研究対象とし、合成化学的手法を用いた構造解明を遂行する。さらに、合成最終生成物と合成中間体を用いて生物活性評価を行うことで、構造と生物活性との相関を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究が計画以上に円滑に進行したため。 次年度の研究費は、薬品や溶媒などの消耗品費、および学会参加に伴う旅費として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)