2012 Fiscal Year Research-status Report
プレマイクロRNA29aを標的とした分子設計指針の導出
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24710262
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福澄 岳雄 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教 (00592768)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ケミカルバイオロジー / RNA / スクリーニング / 分子間相互作用解析 |
Research Abstract |
RNA研究の活発化に伴い,RNAを標的とした分子設計指針の確立が期待されている。RNAはヘアピンループやステムループ等のRNAに特有な高次構造を有し,これらがタンパクによる認識部位となる。しかし,小分子設計の視点では,多様性に富むRNAの構造をどのような分子が認識でき,どのような結合様式があるのかといった分子設計には不可欠となる基本情報が不足している。それゆえに,従来の創薬研究で利用されているタンパクを標的とした分子設計の知見を活かせていない。 そこでRNAステムループに特異的に結合する分子に必要とされる構造要件を抽出するため,医療応用が注目されているマイクロRNAのなかでも,心疾患に関与していることが明らかにされているmiRNA29aに着目した。miRNA29aの生合成前駆体であるpre-miR29aに結合する小分子はmiRNA29aの機能抑制に利用でき,マイクロRNA研究での利用が期待されているためである。 pre-miR29aステムループを標的として設計した,8位にヘテロ環を導入したアデニン誘導体を合成した。合成した化合物ライブラリーは,先に研究室で開発していた蛍光指示薬を用いた蛍光ディスプレイスメントアッセイにより評価した。アデノシン8位に導入したヘテロ環の種類によって蛍光回復率に差が見られ,pre-miRNA29aに結合する候補化合物が合成した化合物ライブラリーの中から見つかった。 蛍光ディスプレイスメントアッセイにより得られた候補化合物とpre-miRNA29aとの定量的な結合解析を行うために,表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング法を活用する準備を進めた。具体的には,5’位をビオチン標識したRNAを,SAセンサーチップ上に固定化する条件を検討した。現在,候補化合物との相互作用解析を実施するための条件を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,未踏領域として残されている「RNAに特異的に結合する小分子の合理的設計法の確立」に必要なRNAと小分子間での相互作用の,構造要件の抽出・解析を目的としている。そのために,標的として選定したpre-miRNA29aに結合する人工小分子を,化学合成を駆使して合成した。化学合成を駆使して構築したライブラリーの中から探索するアプローチは,標的RNAに結合する化合物を手がかりとして,設計→合成→評価→再設計のサイクルを繰り返すことが必要となり,誘導体の簡便かつ網羅的な合成法の確立が鍵となる。初年度までに化合物ライブラリーの合成法を確立する計画を立案し,8位に置換基を有するアデニン誘導体の合成法を確立できた。さらに予定を繰り上げて,合成した化合物とpre-miRNA29aの相互作用解析を蛍光ディスプレイスメントアッセイで評価し,2つの候補化合物を得ることができた。定量的な相互作用解析を実施するため,表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング法を利用した解析を実施するために,解析条件の検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAに特異的に結合する小分子の合理的設計法の確立には,RNAと小分子間での相互作用の解析から,結合に必要な構造要件の抽出が必要である。そのために,標的として選定したpre-miRNA29aに結合する人工小分子を化学合成を駆使して合成し,設計→合成→評価→再設計のサイクルを繰り返すことが必要である。現在,準備を進めている表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング法によって,結合に必要な構造要件の抽出を試みる予定である。未開拓の標的を用いた相互作用解析であるため,解析条件の選定には困難が予想されるが,過去の測定例を調査したり,測定機器の学術部門から積極的に情報を収集することで課題を克服する予定である。さらなる親和力とループ特異性向上のために,相互作用解析の結果を考慮しながら化合物誘導体の合成を継続して行う予定である。一連の合成と解析を通じて得られた情報から,結合に必要な構造要件を詳細に抽出する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
表面プラズモン共鳴(SPR)イメージング法によって定量的な相互作用解析を実施するために必要な試薬や消耗品,参考資料となる図書を購入する予定である。さらに,RNAに特異的に結合する小分子の合理的設計法の確立を達成するために,複数種類のRNAを用いて実験を実施する必要がある。このことから,標的RNA,人工RNA,標的部位への結合を判断するためのRNA等を購入する予定である。相互作用解析の結果を元に,さらに複数の化合物誘導体を合成するために必要な試薬等の消耗品も購入する予定である。得られた研究成果を,学会や学会誌等で発表するためにも,研究費を使用する予定である。
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[Journal Article] Structure-activity studies on the fluorescent indicator in the displacement assay for the screening of small molecules binding to RNA2012
Author(s)
Umemoto, S.; Im, S.; Zhang, J.; Hagihara, M.; Murata, A.; Harada, Y.; Fukuzumi, T.; Wazaki, T.; Sasaoka, S.; Nakatani, K.
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Journal Title
Chem. Eur. J.
Volume: 18
Pages: 9999-10008
DOI
Peer Reviewed
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