2012 Fiscal Year Research-status Report
日本列島における地下生キノコの多様性評価と遺伝資源の保存
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24710271
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木下 晃彦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 客員共同研究員 (70533983)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
日本列島における生物の多様性とその固有性の高さは、動植物に限らずキノコを形成する菌類にも当てはまる。これまで、地上にキノコを形成する分類群に関しては多くの情報が蓄積されてきたが、トリュフのように地下に形成する種(地下生菌)の多様性や生態については看過されてきた。それらのDNAや菌株コレクションも極めて限られている。地下生菌は、腐生、寄生、共生などを通じて動植物と常に関わっているが、どのような種が、どういう場所に存在するのか、また動植物種との関係についてほとんど分かっていない。まずは多様性の解明と動植物との関係を把握し、応用研究へむけたDNAと菌株の確保が重要と考えている。 当該年度は、こうしたトリュフ型キノコを対象に、サンプル収集を中心に行った。すでに十分なんサンプルが揃った分類群については解析を行い、論文としてまとめた。まず、イッポンシメジ属(Entoloma spp.)について、日本の地下生菌種の系統的位置とそれらの生活型について明らかにした。DNA解析の結果、4種が明らかとなり、このうちの2種については新種記載を行った。また、1種が植物と共生し生活するタイプであるのに対し、他の3種はリターを分解する性質をもつことを明らかにした。残念ながら、菌株の確保はできなかった。 この他にも、世界のトリュフの進化系統の論文に共著者として携わった。また、ショウロ属、アルポバ属、メラノガステル属のデータの取得(ITS, LSUのシークエンス)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予想していたとおり、日本列島には欧米・オーストラリアで報告されている種数に匹敵、あるいはそれ以上に地下生菌が多様であることが浮かび上がってきた。たとえば、イッポンシメジ属の地下生菌は世界で6種しか報告されていないが、4種も存在することがわかっており(そのうち2種は新種)、また現在解析中の分類群の中でも、新種が次々に見つかっている。一方で菌株の確保に難航している。子実体の発生はその年の気候の影響をとくに受けやすいため、発生しない限り取得が困難である。これに関しては、引き続き新鮮なサンプルが取得できるよう採取を継続する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はサンプル採取の継続と、DNA解析が終了した分類群の分子系統解析と論文執筆を行う。また系統解析の結果、明らかに新種と判断できた標本については、新種記載を行う。前年度で取得できなかった菌株の確保も行ってゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
サンプル採取のための旅費、DNA抽出、PCR,、シークエンスに必要な試薬類、新種記載の際に必要な簡易顕微鏡類、そして成果発表のための学会参加費などの旅費に費やす予定である。また多大な分子データを解析するための、ハイスペックのコンピュータも導入予定である。
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