人為的攪乱を受けやすい礁池のサンゴ類の持続可能な移植事業モデルの開発

2014 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 24710273
• Research Institution: Ochanomizu University
• Principal Investigator: 広瀬 慎美子 お茶の水女子大学, 湾岸生物教育研究センター, 講師 (10398307)
• Project Period (FY): 2012-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: 造礁サンゴ / 有性生殖 / 放卵・放精 / 分布情報 / マイクロサテライトマーカー

Outline of Annual Research Achievements

本研究では赤土や生活排水の流入，また公共工事の影響など琉球列島の人為的撹乱を受けやすい礁池の造礁性サンゴ類を対象として，1)いつ(=季節，時刻など)，どのように(＝雌雄同体または雌雄異体，放卵放精型または幼生保育型)有性生殖を行うのか，という繁殖様式を解明し，２)個体識別のためのマイクロサテライト(MS)マーカーの開発と，３）琉球列島のサンゴ群集の集団遺伝学的解析から集団内および集団間の遺伝的多様性を明らかにする．それらを基に，「人為的撹乱を起こすことのないような」礁池のサンゴ移植の最適モデルを提唱することを目的としている．
対象種は主に沖縄島の礁池に普通に見られる種で，公共工事等の影響を考慮したサンゴの移植リストに掲載されることがある，ヤッコアミメサンゴ(Psammocora contigua)，シコロサンゴ(Pavona decussata)，トガリシコロサンゴ(Pavona divaricata)とする．サンゴは細胞内に渦鞭毛藻の一種（Symbiodinium sp.）を保持（共生）しているため，成体からMSマーカー開発の為のサンゴのゲノムDNAを得ることは難しい．上記３種のサンゴの精子由来のDNAを得るためにも有性生殖様式を解明する必要がある．
平成２６年度は1)有性生殖様式の解明として，これまでの調査から産卵時期と産卵様式がほぼ確定できているシコロサンゴとトガリシコロサンゴの周年サンプリングを行った標本の組織切片の作成が完了した．３）集団遺伝学的解析のために，これまで採集している沖縄県・沖縄島・今帰仁，沖縄県・西表島・住吉で採集した．これにより，シコロサンゴ類は７カ所，ヤッコアミメサンゴは５カ所から解析に十分な標本数が得られた．２）のMSマーカー開発の予備実験を行った．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

申請時と異なり，平成２４年度８月から千葉県館山市にあるお茶の水女子大学湾岸生物教育研究センターに異動となった．そのため，一部研究計画の変更している．サンゴの産卵時期の特定は完了している．組織切片による有性生殖期間の特定はおよそ半分完了した．集団遺伝学的調査のための採集も完了した．

Strategy for Future Research Activity

組織学的観察の続きと，マイクロサテライトマーカーの開発および集団遺伝学的調査を順次進めて行く。
上記に述べた通り，平成２４年度８月より，千葉県館山市にあるお茶の水女子大学湾岸生物教育研究センターに異動となったため，対象サンゴ種の個体群動態の調査とサンゴ移植片の生存・成長率のモニタリングについては規模を縮小した。一方，温帯域の千葉県館山市で同属別種のサンゴを飼育し，温度などの環境影響を比較する．

Causes of Carryover

申請時と異なり，平成２４年度８月から千葉県館山市にあるお茶の水女子大学湾岸生物教育研究センターに異動となった．そのため研究全体の進行に遅れが生じた．また使用できる機器等に変更があったため使用額に変更が生じた．

Expenditure Plan for Carryover Budget

生殖巣が発達・成熟を行う期間・時期の特定するための組織学的観察に必要な消耗品を購入する．マイクロサテライトマーカーの開発・集団遺伝学的解析:平成26年度に引き続きMSマーカーの開発と集団解析を行う．そのための消耗品の購入する．現所属先にはDNAシーケンサーがないのでシーケンサーを使った解析は外部受託研究の発注を行う．
また英文校正やページチャージなどに使用する．