2012 Fiscal Year Research-status Report
骨の形成に関連する遺伝子をマーカーに用いたサンゴ礁のリスク管理
Project/Area Number |
24710275
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
大久保 奈弥 東京経済大学, 経済学部, 講師 (50401576)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | coral |
Research Abstract |
人為的撹乱や、地球規模での変動による環境要因の変化が、サンゴにどのような影響を与えるのかという観点から、サンゴの生態や生理に関する研究が数多く行われている。特に、海洋酸性化や温暖化等の影響によってサンゴの成長率が低下するといった報告がそうである。しかし、サンゴの成長は年に0.1mm - 1cmと大変遅く、生態学的な観察で成長率が低下しているのに気づいた時には、既に相当のダメージを受けており、その海域を保護するにも手遅れである。ならば、環境ストレスにより、骨を造る遺伝子の発現量が減少している、といった成長率として現れるよりもっと手前のmRNAレベルでの研究を組織学的観察等により行えば、サンゴにかかる負荷をいち早く発見でき、原因の究明や生息場所の保全を行うことができるが、骨の形成に関わる可能性が高い遺伝子は、アザミサンゴという種で見つかった galaxin (Fukuda et al. 2003) という1種のみで、他の遺伝子は未だに発見されていない。そこで私は、幼生が着底変態して骨を造り始める「稚サンゴ」の時期に着目し、骨を造る前の幼生と造り始めた稚サンゴでその生態と発現する遺伝子情報を比較することで、骨形成に関連する遺伝子を見つけようと試みている。1年目の今年は、目的のサンゴの配偶子を採取するための手法について研究を行った。2012年6月、沖縄県にある琉球大学瀬底実験所において、サンゴの産卵を予測し、稚サンゴを生産するための配偶子採取を行った。サンゴ胚からDNA・RNAを採取し、In Situ Hybridizationを行うため、発生過程において特に原腸形成期から連続的にプラヌラのホルムアルデヒド・メタノール固定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼生が着底変態して骨を造り始める「稚サンゴ」の時期に着目し、骨を造る前の幼生と造り始めた稚サンゴでその生態と発現する遺伝子情報を比較することで、骨形成に関連する遺伝子を見つけようと試みており、1年目の今年は、目的のサンゴの配偶子を採取するための手法について研究を行った。2012年6月、沖縄県にある琉球大学瀬底実験所において、サンゴの産卵を予測し、稚サンゴを生産するための配偶子採取を行った。サンゴ胚からDNA・RNAを採取し、In Situ Hybridizationを行うため、発生過程において特に原腸形成期から連続的にプラヌラのホルムアルデヒド・メタノール固定を行うことが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、配偶子を採取し、稚サンゴを作出し、育った稚サンゴからmRNAを採取し、cDNAクローニングを行い、アダプタープライマーをつけ、次世代シーケンサーにかけることで、稚サンゴの時期に発現する全ての遺伝子を採取する予定である。しかし、最近行われている他の動物でのストレスと遺伝子発現の結果をみると、同じ個体でも一日のリズム(例えば、朝と夜)によって、かなり遺伝子発現に差があることがわかってきた。また、サンゴの場合には、生息場所の光環境によって、骨形成に差がある可能性が高くなった(大久保・予備調査より)。サンゴに良い生息環境かどうかは、遺伝子の比較では不十分であり、サンゴの代謝状態を調べる必要があると分かってきた。さらに、前所属先の指導教官であるオーストラリア国立大学のHeyward博士によると、サンゴのマイクロアレイをつくったものの、あまり信頼性がなく、汎用性が低いということであった(Grasso et al. 2008)。そこで、サンゴで発現する骨形成遺伝子だけでなく、基本的なところに立ち返って、サンゴの代謝を測定する実験も加えたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生息環境や概日リズムにより、生物の遺伝子発現に差があることがわかってきたので、サンゴに良い生息環境かどうかは、遺伝子の比較では不十分であり、サンゴの代謝状態を調べる必要があると分かってきた。さらに、前所属先の指導教官であるオーストラリア国立大学のHeyward博士によると、サンゴのマイクロアレイをつくったものの、あまり信頼性がなく、汎用性が低いということであった(Grasso et al. 2008)。そこで、サンゴで発現する骨形成遺伝子だけでなく、基本的なところに立ち返って、サンゴの代謝を測定する実験も加えたいと考えており、酸素消費量を測定する装置を購入しようと考えている。
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Research Products
(1 results)