2012 Fiscal Year Research-status Report
有用樹木の利用・分散プロセスが、野外自然集団に及ぼす生態遺伝学的影響
Project/Area Number |
24710276
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
亀山 慶晃 東京農業大学, 地域環境科学部, 助教 (10447047)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有用樹木 / 遺伝的攪乱 / クスノキ / SSRマーカー |
Research Abstract |
本研究の究極目的は、人間活動が介在する遺伝子流動に着目し、有用樹木の利用が野外自然集団に及ぼす影響を分子生態学的視点から議論することである。そのためには、(1) 集団の遺伝構造に基づく「地域性の定義(形成要因の究明)」、(2) 遺伝的攪乱が生じる「時間的・空間的なプロセス」、(3) 遺伝的攪乱による「野外自然集団への影響」に関するデータが不可欠である。このような視点から、研究対象種としてクスノキを選定した。クスノキは日本、台湾、中国南部を中心に広く分布し、古来から利用されている有用樹木であり、野外自然集団だけでなく、成立年代が明確な植栽集団や、樹齢数百年以上と推定される数多くの巨樹・巨木が存在する。即ち、集団の遺伝構造に基づいた地域性の定義や、遺伝的攪乱が生じる時空間プロセスを解明する上で最適な材料である。一年目に当たる本年度は、様々な特徴を持つクスノキ集団(個体)を調査し、研究の基盤を作ることに尽力した。具体的には、分布域の中心と考えられる中国南部、日本との歴史的繋がりが強い台湾、様々な「地域集団」が存在する日本、の計3カ国を対象に網羅的な調査をおこない、GPSによる位置の記録、樹高及び幹周の測定、遺伝分析用の試料(葉)の採取を実施した。採取したサンプル数は既に数百個体を越えており、今後の遺伝分析の基礎を作ることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、台湾、中国、日本で調査を実施し、遺伝分析用の試料(葉)を採取できた。国外での調査及びサンプリングが計画通りに進むことは極めて珍しい。特に、遺伝分析用の試料を採取することが困難な中国において、現地の研究者と密接に連絡を取り、万全の協力体制を築いたことは大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
野外集団での調査及び遺伝分析用の試料採取は、二年目も継続的に実施する。さらに、既に開発が完了しているマイクロサテライト遺伝マーカーを用いて、採取した個体の遺伝分析(PCR、電気泳動、タイピング)を随時進めていく。また、クスノキの更新過程を明らかにするため、室内での発芽実験と、野外プロットでの播種・追跡試験をおこなう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の計画を実施するためには、野外調査の旅費と消耗品、遺伝分析用の試薬及び実験消耗品が必要となる。実験に必要な器機類は、既に研究室で所有しているものを使用するが、器機が故障した場合やサンプル数が予定以上に増えた場合には、修理または新規購入を検討する。
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