2012 Fiscal Year Research-status Report
アゾール系薬剤耐性病原真菌の地理的分布の現状と将来予測
Project/Area Number |
24710277
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
廣瀬 大 日本大学, 薬学部, 助教 (20513922)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 病原真菌 / アスペルギルス症 / 地理的分布 / 薬剤耐性 / アゾール / 集団遺伝 |
Research Abstract |
近年、アスペルギルス症の主要原因菌であるAspergillus fumigatusにおいて、臨床で頻繁に用いられてるアゾール系薬剤に対する耐性株の出現が確認されている。本邦においても耐性株の存在が確認されているが、その分布にみられるパターンや分散プロセスは不明である。本研究では、耐性株の地理的な空間スケールでの分布を、農耕地や森林といった野外環境と臨床における調査から実証的に明らかにする。加えて、集団遺伝学的解析により耐性株の分散プロセスを推定する。本研究による分布の現状把握と将来予測に基づく耐性株拡散のリスク評価は、予防医学的に不可欠な情報を与えるだけでなく、自然界における微生物保全に関して考える糸口を提供する。 本研究では次の二つの研究テーマを行う。テーマ1 地理的分布の実態調査:アゾール系薬剤耐性株の野外環境及び臨床における分布を地理的なスケールで実証的に明らかにし、その制限要因を気候要因や土地利用の点から推定する。テーマ2 集団遺伝学的パターンの調査:集団遺伝学的解析により各種における集団間の遺伝子流動や隔離の解析を行い、薬剤耐性株の分布拡大プロセスの推定を行う。最終的に、両テーマを総合的に考察する事により、将来の分布拡大を予測する。 本年度は、それぞれのテーマの土台となる菌株の獲得と分子マーカーの作成を中心に研究を進めた。前者に関しては、房総半島、伊豆諸島、日本アルプス、島根県出雲地域の森林もしくは畑地の土壌から分離培養を行い、約600菌株を確保した。加えて、千葉県の臨床から分離された136菌株を千葉大学からの分譲により獲得した。後者に関しては、公開されている全ゲノム情報を基に作成した165のマクロサテライトマーカーから多型性や特異性の点から集団遺伝学的解析を行うのに適したものを8個選択した。次年度はこれらのマーカーを用いたジェノタイピングを進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成の鍵を握る菌株の確保に関し、本年度は野外環境から約450株、臨床から150株と予想以上の数を獲得することが出来た。集団遺伝学的解析に必須の分子マーカーの開発も順調で8個のマイクロサテライトマーカーの選抜を終了することが出来た。これらのことから、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ獲得した菌株は、採取地点が限定的であり、広域的な分布パターンを明らかにするには未だ乏しい状態である。そこで、次年度は、北海道から沖縄にわたる異なる気候帯での網羅的なサンプリングを中心に行う。本年度は獲得した菌株に対し、抗真菌薬感受性試験やマイクロサテライトマーカーによるゲノタイピングを進めることはできなかった。分子マーカーの選抜は終了したので、次年度は獲得した菌株のジェノタイピングを先ず進める。続いて、抗真菌薬感受性試験を行う。得られたデータから分布パターンを、気候帯や年平均気温等の気象データ、採取地点の土壌環境、土地利用などのデータに基づく多変量解析により推定することが次年度の目標である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、野外環境からの菌株の収集をより広域的に行う。さらに、すでに獲得した菌株とともにゲノタイピングを進め、抗真菌薬感受性試験を行う。これらを遂行するための、旅費、分子生物学的実験にかかる試薬及び抗真菌薬感受性試験のキットの購入費として研究費を使用する予定である。
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