2012 Fiscal Year Research-status Report
ポスト・スハルト期インドネシアにおける「華人の伝統宗教」の現在
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24710282
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津田 浩司 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (60581022)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インドネシア / 華人 / 伝統宗教 / ポスト・スハルト期 / 信仰実践の変容 |
Research Abstract |
本研究は、スハルト体制崩壊後のインドネシアで、社会・政治環境が大きく変わりつつある中、華人系住民の信仰実践の実態・変容を明らかにすることを目的としている。特に、仏教・孔教(儒教)・道教にまつわる諸宗教団体(いわゆる「華人の伝統宗教」と見なされる宗教を奉じる団体)、ならびに各地に点在する寺廟コミュニティでのフィールド調査を通じて、上記内容を質的・量的に明らかにすることを目的としている。 平成24年度は、いわゆる「華人の伝統宗教」の組織化の動向や広がりを全国レベルで把握し、その傾向性を理解するため、手始めにジャワ島とは異なるプロセスで華人社会が形成されたスマトラ島リアウ州および北スマトラ州の諸都市を訪れた。現地では可能な限り多くの寺廟、ならびに華人団体を訪れ、その成立過程や現今の活動実態について聞き取り調査を行った。 この調査に先立つ8月末には、インドネシア科学院(LIPI)で開催された国際セミナーにおいて、"Research on "Chinese Traditional Religion" in Post-Soeharto Indonesia"と題して本研究課題の実施計画についてプレゼンテーションを行ない、同国の華人研究の第一人者らから建設的な意見を得た。 また、日本華僑華人学会の学会誌の特集「ポスト・スハルト期のインドネシア華人」に論文を執筆し、ジャワ島を拠点に「華人の伝統宗教」を奉じると自認し活動を活発化させつつある諸宗教団体の、2000年代以降の動向を具体的に紹介するとともに、その社会・政治的背景を分析し、本研究課題に接続する問題系を明らかにした。さらに、Asian Ethnicity誌のポスト・スハルト期インドネシアに関する特集号には、ジャワ島の寺廟で現在生じつつある諸問題および変化の具体的様相を整理した論文を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、平成24年度はスマトラ島の諸都市において、寺廟を中心とする華人の信仰様態の状況を概観し、量的にその傾向性を理解することができた。また、国際セミナーでの報告を踏まえて、インドネシアにおいて華人研究を進めている一線の研究者たちと意見交換し、今後の研究の進め方について有益なアドヴァイスを得ることができた。 諸宗教団体中枢や宗教省等の担当官庁での調査は着手することができなかったが、次年度以降精力的に取り組むための人脈作りができている。 国内の学会誌および国際学術誌に論文各1本が掲載され、初年度としておおむね順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、いわゆる外島諸地域における寺廟の宗教活動の状況について、量的調査を継続する。調査項目や方法は基本的に前年度と同様であるが、本年度はカリマンタン島西部、ないしスラウェシ島北部地域を重点的に回る予定である。 平成26年度・27年度の研究計画についても、目下のところ当初申請した内容に変更はない。すなわち、平成26年度には中ジャワ州ルンバンおよびもう1カ所本課題に適切な場所を選定した上で、寺廟を取り巻くコミュニティにおいて信仰実践のあり方とその変容を質的に明らかにすべくフィールド調査を行なう。平成27年度は前年度の追加調査を行なうとともに、研究を取りまとめ、学会などで成果報告を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①6月26日~29日にゲッティンゲン大学(ドイツ)において開催される国際会議"Dynamics of Religion in Southeast Asia"で、本研究課題に関する研究発表を行なう。往復の旅費としておおむね20万円を使用する(現地宿泊費は先方負担)。 ②8月上旬から1ヵ月間、インドネシア各地(ジャワ島、カリマンタン島、スラウェシ島)で調査を行なう。旅費・現地滞在費としておおむね40万円を使用する。 ③②の調査において部分的に、現地の事情に明るい大学院生ないし地元新聞記者にコーディネーターを依頼し、謝礼を支払う。おおむね10日間、計10万円程度を支払う予定である。
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