2013 Fiscal Year Research-status Report
ポスト・スハルト期インドネシアにおける「華人の伝統宗教」の現在
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24710282
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
津田 浩司 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (60581022)
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Keywords | インドネシア / 華人 / 伝統宗教 / ポスト・スハルト期 / 信仰実践の変容 |
Research Abstract |
本研究は、スハルト体制崩壊後のインドネシアで、社会・政治環境が大きく変わりつつある中、華人系住民の信仰実践の実態・変容を明らかにすることを目的としている。特に、仏教・孔教(儒教)・道教にまつわる諸宗教団体(いわゆる「華人の伝統宗教」と見なされる宗教を奉じる団体)、ならびに各地に点在する寺廟コミュニティでのフィールド調査を通じて、上記内容を質的・量的に明らかにすることを目的としている。 前年度に引き続き、いわゆる「華人の伝統宗教」の組織化の動向や広がりを全国レベルで把握し、その傾向性を理解するべく、平成25年度はスラウェシ島北部(マナドおよびその周辺)、カリマンタン島東部(バリックパパンおよびサマリンダ)、カリマンタン島西部(ポンティアナッ)の主要都市を訪れた。これら地域は、ジャワ島とは異なる歴史過程を経て華人社会が形成されているが、スハルト時代の宗教政策や政治状況の影響を受け、寺廟の法的・宗教的ステータスの面では多くの共通点が見られた。一方で組織化の点では、ジャワ島を拠点に各地の寺廟を糾合しようと働きかけを行なっている諸団体の直接的影響力は実質的にあまり見られないことが、同地の諸寺廟ならびに華人団体等における聞き取りを通して浮かび上がった。 平成25年度の本研究に関する成果公開としては、6月末にゲッティンゲン大学(ドイツ)で開催された「東南アジアの宗教動態」研究ネットワーク主催の国際会議において、"Chinese Religion" in Modern Indonesia: Focusing on the Trend Toward Systematization in the Post-Soeharto Era"と題する報告を行なった。なお、当該会議報告に当たり提出したペーパーは、同研究ネットワークが運営するウェブジャーナル上に平成26年度中に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、平成25年度はスラウェシ島北部およびカリマンタン島西部に加え、カリマンタン島東部の主要都市において、寺廟を中心とする華人の信仰様態の状況を概観し、量的にその傾向性を理解することができた。なお、当初予定していたスラウェシ島南部の調査は、時間的制約から今年度は見送った。 また、国際会議の場において、本研究課題のアウトラインと現段階で分かったことを報告し、かつ活発に討議することで、東南アジアの宗教動態という広い文脈から本研究を位置付け直すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は当初の予定通り、いわゆる外島諸地域における寺廟の宗教活動の状況について、量的調査を継続する。調査項目や方法は基本的に前年度・前々年度と同様であるが、本年度は東部インドネシア地域を重点的に回る予定である。 加えて今年度は質的調査として、ジャワ島内の特定の都市において、国家の政策、宗教(組織・団体)、コミュニティ(寺廟を取り巻く人々)がどのようにせめぎ合っているか、具体的に明らかにする予定である。 最終年度の平成27年度の研究計画も、目下のところ当初申請した内容に変更はない。
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