2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24710287
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹田 敏之 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特任研究員 (40588894)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アラビア語 / アラブ世界 / イスラーム復興 / アラビア語教育 / 言語アカデミー |
Research Abstract |
本研究は、現代アラビア語の変容とその使用実態を、言語の規範整備を担うアラビア語アカデミーに関する調査と、新語や現代用法の収集・分析によって明らかにすることを目的としている。平成24年度は、研究計画にそって次の5項目にわたる研究活動を行った。 1.カイロ・アラビア語アカデミーを中心とするアラブ諸国の学術ネットワークについて、エジプト(アラビア語アカデミー、学術アカデミー統一連合)、チュニジア(文芸学術アカデミー、アラブ教育文化学術機構)、モロッコ(タアリーブ研究センター、フェズ専門用語研究所)を対象に、活動実態の把握と機関刊行物および辞書類の収集を目的とした臨地調査を実施した。 2.エジプト、チュニジアにおける民主化革命後の出版事情を調査し、関連書籍および印刷物の収集を行った。入手した資料を分析対象とし、新語や若者ことば、および口語を含む新たな表現形態の抽出とデータ集積の作業を開始した。 3.上記2の作業で抽出する新語および新たな表現形態に関して、上級者向けの文法書にいかに用例として取り入れるかという課題を共同執筆者と討議し、高度なアラビア語文法レファレンスの刊行に向けた準備作業に入った。 4.現代アラビア語の地域偏差と語彙生成のプロセスについて、アラブ諸国の代表的な学習辞典3書を対象に、特に道具名詞を収録語の観点から比較分析し、その結果を日本中東学会年次大会および国際ワークショップにて発表した。 5.イスラーム復興にともなう伝統的文法教育の普及と現代アラビア語の変容への影響について、モーリタニアにおける「マフダラ教育(クルアーン学校)」を対象に臨地調査を行い、読み書き教育の実態把握と文法教科書の収集を行った。次年度以降、エジプトや湾岸諸国(サウジアラビアなど)との知識人ネットワークという視点を加え、継続して検討と考察を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
達成度について、以下の5つの点から順調な進展と自己評価した。 1.臨地調査を実施することで、市販されていない各研究機関の刊行物、およびデータ構築のためのアラビア語文献と現地資料の収集が計画通りに進んだ。 2.上記1の成果により、新語の抽出のための素材選定が可能になり、次年度以降継続して行う抽出と分析作業、およびデータ集積の見通しが立てられた。またこの作業と並行して行う文法レファレンスの作成・執筆についても研究期間内での刊行計画が具体化してきた。 3.臨地調査による聞き取り調査の実施により、アラブ諸国におけるアラビア語研究機関との学術交流が推進され、最新の研究動向が把握できたとともに、海外研究者との人的ネットワーク構築が大きく進展した。 4.研究成果を本年度中に口頭発表することで、本研究課題に関する研究者との討議が可能となり、次年度以降の研究と論文としての発表に向けた多角的な検討を加えることができた。 5.次年度に予定していたイエメンでの調査が、治安状況により当面難しくなるであろうという判断から、アラブの血統を重視するという点で共通性のあるモーリタニアをフィールドとした臨地調査を本年度の臨地調査に加える形で実施した。その結果、研究目的の3つ目に掲げた「イスラーム復興の流れにともなう伝統的アラビア語学習の普及とその実態解明」について、予想していた以上の現地資料の収集と研究上の新たな視座を得ることができた。この臨地調査の成果については、次年度に口頭発表を行い、論考にまとめ研究成果として発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度使用額については、データ入力のためのPCの購入に充てる予定である。これは、多言語入力への対応が進んだウィンドウズ8の登場と普及により、本年度予定していた購入時期を変更したために生じたものである。本研究課題の入力作業の大部はアラビア語・英語・日本語といった多言語によるため、またアラビア語という右から左への特殊言語であるため、よりそれに適したPCの購入が好ましいと考えたことによる。 また次年度の海外調査については、当初予定していたイエメンの治安状況を考慮し対象国をモーリタニアと湾岸諸国およびスーダンとする。前年度の研究成果をさらに発展させる形で、モーリタニアにおける伝統的なアラビア語教育の実態と現代アラビア語へ影響の解明を目的とした臨地調査を継続して行う。その際、東アラブの特にエジプトや湾岸諸国(クウェート、サウジアラビア)との知識人ネットワークに着目する。また、アラビア語アカデミーの学術ネットワークについて継続した調査を行い、未解決であるスーダンのアラビア語アカデミーを対象に臨地調査を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、分析およびデータ構築に必要な文献資料の購入、および2か月間の実施を予定している臨地調査のための海外旅費(航空運賃と日当宿泊費)に使用する。その他データ保存用メディア・複写代など用例収集とデータ集積の作業工程にかかる費用に充てる。また研究の進展によっては、これまで収集した資料の整理とデータ入力について補助作業が必要になるため、その場合は1名分の謝礼に使用する予定である。
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