2012 Fiscal Year Research-status Report
フィジーの村落における自然災害対応と伝統的知識に関する研究
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24710289
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤枝 絢子 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (60598390)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | フィジー / サイクロン / 自然災害 / 伝統建築 / 伝統知識 / 自立的再建 |
Research Abstract |
本研究では、自然災害常襲地であるフィジーの村落において、伝統的な災害対応の知識や技術を再認識し、現在の村落のコンテキストにおける活用可能性を検証することを目的とし実施している。 本年度は、文献調査による伝統的な災害対応の知識や技術を整理することにより、農業(多様な作物、サイクロンに強い作物の栽培等)、食糧の確保(保存、野生作物の活用等)、安全な住環境(サイクロンに強い住居建築、居住場所)、相互扶助システム(種族・部族間の関係、価値観等)など生活の安定性を確保するための知恵や技術が、自然災害に対するレジリアンスを構築してきたと確認した。 また、フィジーでは、自然災害のなかでもサイクロンによる農業・住居への被害が大きく、安定した生活や生計の維持を阻む脅威となっていることが分かった。特に農村部に多い簡易なトタン屋根の住居は、強風に脆弱でありサイクロンによる倒壊、半壊の被害が大きい。被災地では、政府・外部機関の緊急・復興支援への期待が高い。しかし、小島嶼国としての規模の小ささ、遠隔性から外部からの支援には迅速な対応が困難などの限度があり、また過剰な支援は依存を生んでいるなどの課題が明らかとなった。 外部支援による住居再建は、遠隔地の被害把握、材料調達や運搬、人材確保などに時間や資金を要し、結果的に一時的な住居に長期間の居住をせざるを得ない状況となっている。生活の基盤となる快適な住環境の確保には、現地の資源による自立的な住居再建が必要だと考えられる。現地の資源による住居建築の特質から、フィジーの伝統建築の活用可能性を検証すると伝統木造建築は、現在ほとんど建設されることはないが、村落での伝統建築再建を通して村落内の自然資源、共同労働、人的資源(知識や技術)によって未だに建設可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、フィジー系の村落を対象にフィールド調査を実施し、村落での実態、伝統的な災害対応の技術や知識の潜在性を明らかにし、現在の村落のコンテキストにおける活用可能性を検証することを目的とする。 特に、食糧の安全保障、安全な居住環境、相互扶助システム、生業の安定に注目し、①村落における現在の災害対策(事前の災害対応)、②近年の気象災害の被害と復興プロセスの課題(事後の災害対応)、③伝統的な災害対応の知識や技術を抽出、④対象の村落において伝統的な知識や技術の潜在性を検証、⑤①と②から明らかとなった現状と③と④から確認できた潜在性を検討し、現在の村落のコンテキストにおける活用可能性を検証を行う予定である。 平成24年度は、現地調査を通して②と③についての情報収集、整理が行えたとともに、伝統建築においては、本島(Viti Levu島にて)④村落における伝統知識や技術の潜在性を確認するとともに、活用可能性を検証できており、予定どおりに研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、食糧の安全保障(農業(多様な作物、サイクロンに強い作物の栽培等)、食糧の確保(保存、野生作物の活用等))、相互扶助システム(種族・部族間の関係、価値観等)、生業の安定に着目し村落にてフィールド調査を実施し、自然災害の被害と復興プロセスについて現状の把握、対象村落における伝統的な災害対応の知識や技術の潜在性の確認、活用可能性を検証する。調査対象地については、平成24年度は本島の村落を対象としており、平成25年度は離島での調査を実施する予定である。 フィールド調査の結果にもとづき、現在のフィジーの村落のコンテキストにおける知識や技術の有無、知識や技術の保持と継承、日常生活、社会文化的慣習などから、潜在性と活用可能性を検証し、フィジーの自然災害対策における可能性を検証する。また、フィジー災害対策局(NDMO)との意見交換を行い、研究成果の還元を図る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費:資料収集や成果発表のための国内旅費、フィールド調査のための渡航費(2回)、成果発表(1回)を外国旅費 設備:備品:関連資料購入費を計上する。フィジーの研究を活発に行っている国(イギリス、ニュージーランド、オーストラリアなど)からの書籍の購入 消耗品:フィールド調査時に必要な記録メディア媒体(写真データ記録用メモリ、ポータブルハードディスク) 謝金等:フィジーでの協力者謝金は、村落でのフィールド調査時にフィジー語によるコミュニケーション、現地資料の翻訳など、調査研究に不可欠な情報収集
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