2013 Fiscal Year Annual Research Report
フィジーの村落における自然災害対応と伝統的知識に関する研究
Project/Area Number |
24710289
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤枝 絢子 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (60598390)
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Keywords | フィジー / サイクロン / 自然災害 / 伝統建築 / 伝統知識 / 自立的再建 |
Research Abstract |
フィジー諸島共和国において、頻発する自然災害は、農業や漁業などの生業や住居に被害をもたらし、村落の人々にとって生活や生計の維持を阻む脅威となっている。本研究では、村落を対象とし、地域の資源を用いたレジリアンスの向上のため、伝統的な災害対応の知識や技術を再認識するとともに、その活用可能性を検証することを目的とした。 文献調査では、伝統的な災害対応の知識や技術を抽出し整理した。その結果、農業(多様な作物やサイクロンに強い作物の栽培)、食糧の確保(保存、野生作物の活用)、安全な住環境(サイクロンに強い住居建築、居住場所)、相互補助システム(氏族・部族間の共助、価値観)など生活の安定性を確保するための多様な知恵や技術が、自然災害に対するレジリアンスを構築してきたことが分かった。 続いて、住環境に注目し伝統木造建築の活用可能性を検証した。村落で一般的な簡易なトタン屋根の住居は、強風に脆弱であり、近年のサイクロンでもその多くが倒壊、半壊する被害が報告されている。被災地では、政府・外部機関の住居再建支援への期待が高い。しかし、小島嶼国としての小ささや遠隔性により、外部支援による対応に限度があり、また過剰な支援が依存を生むなど課題が挙げられ、現地資源による自立的な住居再建への転換への必要性が明らかとなった。伝統木造建築は、近年ほとんど建設されることはないが、村落での再建プロジェクトを通じて、村落内にて、自然資源、労働力、知識や技術が潜在し、建設可能であることを確認した。また、建設機会が提供されることで、伝統木造建築の価値が再認識され、自主的な建設が行われていることが観察された。 このように、村落の自然環境や社会文化環境で培われてきた伝統的な知識や技術は自然災害に対するレジリアンスの向上に寄与すると考えられ、今後、変容する村落において積極的に維持・継承する意味を見出すことが必要である。
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