2013 Fiscal Year Research-status Report
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24710293
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
島田 美和 慶應義塾大学, 総合政策学部, 講師 (60580157)
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Keywords | 日中戦争 / 西北開発 / 辺疆開発 / 領土認識 |
Research Abstract |
本研究では、東アジア地域における開発と領土の問題をめぐる諸相を、国民政府期の西北開発と領土認識の関係性に着目し、歴史的視座の下で解明することを目的とする。 そのため本年度は以下の調査を行い成果を得た。 ①台湾台北中央研究院近代史研究所档案館の農林部档案を調査し、特に日中戦争期における蒋介石や国民政府の西北開発や辺疆開発の史料について調査を行い貴重な資料が得られた。2013年9月重慶で開催された日中戦争に関する国際会議で報告を行い、日中戦争期における蒋介石の辺疆開発政策とそれに伴い「辺疆」地域へ移民する人々の関係と実態について分析し、日中戦争期における国家と社会の関係の一側面について明らかにした。 ②内モンゴル自治区五原県の移民村にてフィールドワークを行い、日中戦争の開始前に河北省から内モンゴルへ移住してきた漢族住民の聞き取り調査を行った。同時に、清末から民国期にかけて建設された黄河から引水される灌漑用水施設の調査を行った。2013年12月に現代中国研究センター(慶應義塾大学)にて、調査報告を行い中国におけるフィールド調査の問題点や、歴史研究と現代中国研究との関係について意見を述べた。本調査では、現地住民への聞き取りにより日中戦争期のみならずそれ以前からの中国における国内移動の法則性が明らかとなり、また灌漑用水路等の定点調査によって環境的要因に留意する必要性も認識できた。その結果、中国内陸部における近現代から現代への移民の移出地と移入地の関係性を分析することができ、日中戦争期の移民の特殊性について明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、国民党政権の西北開発事業と基層社会への影響力を検証するために、台湾台北中央研究院近代史研究所と国史館において一次資料の収集を行った。 当初予定していた馬鶴天関係の資料について、台湾台北の各档案館で体系的に見つけることができなかった。そのため、戦時における基層社会の変容を解明するために、中央研究院近代史研究所の農林部档案を調査したところ、蒋介石の辺疆開発政策における辺疆工作への従事を志願する人々の履歴書など貴重史料を発見し、その資料について入念な調査と分析を行った。これにより、日中戦争期の移民開墾政策の社会側からの反応を検証することが可能となった。加えて、国史館においても蒋介石の辺疆工作に対する施策に関する資料を得た。これらの新資料により、戦時における国民党政権の西北開発および辺疆開発政策の特徴の一端が解明できた。 他方、夏季に行った内モンゴルへのフィールドワークでは、五原県での漢族移民へのインタビューと灌漑用水路の定点調査により、内モンゴルへの漢族移民の動態と地域社会の変容の一側面が明らかとなった。来年度も引き続き調査が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、第一に中国のアジア主義と西北開発との関係、またそれに伴う領土認識について、第二に日中戦争期における国民党政権の西北開発政策及び辺疆開発政策の特徴と中国社会の変容過程について考察を行ってきた。 来年度は最終年度であるため、昨年度まで行ってきた内モンゴル自治区でのフィールドワークの継続とともに、蘭州市や甘粛省での文献調査とフィールドワークを行い、内モンゴルと甘粛地域との比較を行い、日中戦争期における中国社会の変容過程の考察のまとめを行う。 加えて、欧米におけるアジア概念、西北概念を整理するために欧米における関連資料の調査を行う。秋季以降は研究成果をまとめる作業に専念したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
内モンゴル自治区でのフィールド調査の際の宿泊費や交通費が現地カウンターパートの協力によって当初の予定よりも安価になったため。 フランスへの調査(欧米の地理概念についての資料調査・フランス宣教師の記録の史料調査)へ経費を充てるほか、ハードディスクの購入など資料整理に必要な機材を購入する予定である。
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