2017 Fiscal Year Annual Research Report
A study of "Chongqing Model"in China: Socio-economic development and change of regional structure
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24710294
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
小原 江里香 久留米大学, 経済学部, 准教授 (30400203)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中国 / 都市化 / 重慶 / 戸籍制度改革 / 低所得者住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は最終年度で、主な研究成果は2つである。(1)近年の重慶経済の実績をいくつかの経済指標を用いて評価した。要点は以下のとおりである。まず、全要素生産性の向上や投資効率の改善傾向などから、粗放的な成長パターンから集約的な成長パターンへの転換の兆しがある。その兆しは、非国有企業の生産性の向上から生じており、加えて非国有企業は、「一帯一路政策」で得られた貿易の機会を生かして、海外でも開発製品の販売を通じて活動の幅を広げている。一方で、生産性向上の「果実」を享受しているのは、賃金構造の分析結果から、非国有企業の就業者ではなく、高い賃金や優遇策に守られた国有企業の就業者である。現政権は、今後も国有企業の更なる強化を宣言していることから、非国有企業の生産性向上による「果実の収奪」はますます固定化されつつある点を指摘した。 (2)中国において代表的都市化モデルの一つとされる「重慶モデル」について、現地調査を通じて実施状況を整理した。とりわけ「重慶モデル」の重要な骨組みである戸籍制度改革と低所得者住宅制度改革に着目し、以下の点を指摘した。重慶の戸籍制度改革は他地域と比べて成功しているとする意見が散見される。「重慶モデル」成功の背景には、戸籍制度改革を補完する形で機能している「公租房」と呼ばれる低所得者住宅制度がある。「公租房」に住む大半は、他地域と異なり、戸籍を農村戸籍から都市戸籍に変更した「農転非」就業者や戸籍変更をせずに都市部で働く出稼ぎ労働者である。敷地内には保育園や医療施設が併設されており、比較的に安心して住める家が一般の賃貸マンションよりも安く借りられる。「公租房」は戸籍の変更を推進する戸籍制度改革を後押しするだけでなく、出稼ぎ労働者が住む劣悪な環境の集中居住地域を中心部近郊に形成することを抑止する効果も持っている。
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Research Products
(2 results)