2013 Fiscal Year Annual Research Report
中国南部との比較にみるベトナム北部の木造建築の独自性とその展開
Project/Area Number |
24710295
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
大山 亜紀子 日本大学, 工学部, 助教 (70459858)
|
Keywords | ベトナム北部 / 中国南部 / 木造建築 / 仏教寺院 |
Research Abstract |
本研究は中国文化圏に属するベトナム北部周辺の木造建築技術について、これまでのベトナム北部の仏教建築の研究成果を基軸にして、中国南部(華南)における遺構との比較により、ベトナム北部の木造建築技術の展開および独自性の再検討を試みたものである。中国を含めた周辺地域との比較研究は、東アジア文化圏における木造建築の技術の変遷に関する指標を策定する上で重要である。 今年度の現地調査は、文献資料の精査およびカウンターパート(ベトナム考古学院)の協力により当初の研究計画を変更し、下記のベトナム北部2地域において、寺院やディン(村落集会所兼神社)を中心に14寺廟の調査を実施し、平面図実測、架構形式・年代銘の記録など基礎資料の充実をはかった。《クアンニン省》DinhBinhLuc, ChuaAnDong, DinhYenDong, DinhPhuongCoc, DinhTrungBan, DinhLuuKhe, DinhQuanLan, ChuaQuanLan, DinhTraCo、《ニンビン省》DenLe, DenDinh, DinhTrungThuong, DinhTrungHa 黎朝以降の政治的混乱、村落共同体の結束、交易の振興がもたらした経済成長と仏教の大衆化などによって、ベトナム北部の村落では、17世紀から18世紀にかけて社寺造営の建立・再興の隆盛期を迎えた。この際、寺院では伽藍構成や架構、軒周りの組物などに新たな手法が中国からもたらされたとみられるものの、外来技術の積極的な摂取による技術的改良や空間規模拡張などの著しい発展には至らなかった。また、この時期に形成された伽藍構成や各建物の規模形式を固守し続けながら、信仰形態や機能の変化に応じて空間構成を変質させていったことが、寺院におけるベトナム木造建築の独自性のひとつとして位置づけられる。
|