2012 Fiscal Year Research-status Report
熱帯アフリカにおける森林資源利用の歴史生態学的研究と慣習的権利の確立へむけた応用
Project/Area Number |
24710296
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
安岡 宏和 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (20449292)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / フランス / カメルーン |
Research Abstract |
カメルーン東南部において2回のフィールドワークを実施し、バカ・ピグミーによる狩猟採集キャンプ跡における野生ヤムの分布を調査した。野生ヤムは、アフリカ熱帯雨林に住む狩猟採集民にとって、もっとも重要なカロリー源食物だと考えられてきた。1980年代後半の「ワイルドヤム・クエスチョン」という問題提起では純粋な狩猟採集生活をささえるだけの規模で野生ヤムが分布しているかどうに疑問が呈されたが、その後の研究の進展によって、地域によっては十分な量のヤムが存在していることがしめされてきた。しかし近年の研究では、農耕民による森林植生の攪乱、すなわち焼畑農耕や集落の形成が、野生ヤムの分布に影響した可能性が示唆されている。本研究では、バカ・ピグミーによって大量に野生ヤムが消費された二つのキャンプ跡地での調査をもとに、農耕民による大規模な攪乱がなくとも広範囲に野生ヤムが分布しうるかについて考察した。放棄されて10年および7年が経過したそれらのキャンプ跡地を訪れたところ、二種の野生ヤム(主としてD. praehensilisとD. semperflorens)が1000個体/haという高密度で生育していた。同行したバカによれば、これらは料理されたさいに捨てられたイモ片から再生したものだという。それはヤムを食べる行為につねに付随するものであるから、バカあるいはその祖先の狩猟採集民は、たとえその結果を知らなくても、あるいは明確に意図していなくても、たんに野生ヤムを食べることをとおして、その拡散に貢献してきたことになる。さらにこれまでに得られた定量データをあわせて分析したところ、この過程で形成される野生ヤム分布が、狩猟採集民の生存維持に必要なだけの規模になりうることが明らかになった。以上の結果は、バカによる森林資源利用の歴史を明らかにし、また資源への権利について論じるさいに、きわめて重要な意味を持つ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年5月に予定どおり、第13 回国際民族生物学会においてセッションを開催し、慣習的森林利用のレジティマシーと歴史生態学について議論をおこなった。また、2012年6月に実施したフィールドワークをもとにして、論文が出版された。そのさい、野生ヤムの遺伝情報を含む標本を採取し、フランス国立科学研究センターおよびフランス開発研究所の共同研究者とともに、分析実験をすすめているところであり、2013年度には、その結果をもとに論文を書き上げる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
予算の執行時期の関係で研究費が次年度に持ち越されたものの、おおむね当初の計画どおりに研究が進展しているため、今後も当初の計画どおりに研究をすすめていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた、野生ヤムの遺伝系統についての分析実験における試薬費や謝金等の決済が、共同研究をおこなっているフランス国立科学研究センターとのスケジュール調整を経て、2013年度にずれ込んだため、予定していた研究費の大部分が次年度に残ることになった。したがって、実際には研究の進行が遅延しているわけではないので、おおむね当初の計画どおり予算を使用することになる。
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Research Products
(4 results)