2013 Fiscal Year Research-status Report
熱帯アフリカにおける森林資源利用の歴史生態学的研究と慣習的権利の確立へむけた応用
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24710296
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
安岡 宏和 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (20449292)
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Keywords | 歴史生態学 / 生物(分子)系統地理学 / NTFP(非木材森林資源) / 熱帯雨林 / 国際情報交換 / フランス / カメルーン |
Research Abstract |
カメルーン東南部でフィールドワークを実施したさいにおとずれた、バカ・ピグミーによる狩猟採集キャンプ跡で野生ヤムのDNAサンプルを採取し、フランス国立科学研究センター(CNRS)のロール博士、フランス開発研究所(IRD)のスカルセリ博士とともに、マイクロサテライト・マーカーを利用した遺伝系統分析を実施した。その結果、キャンプ跡に生育する野生ヤム個体群の遺伝系統は、キャンプ内・キャンプ間においてまったく構造化されていないこと、またマイクロサテライト遺伝子座におけるヘテロ接合頻度はハーディ・ワインベルグ平衡から有意に外れていることが分かった。この二点から、これまでに確認されたように、バカ・ピグミーのキャンプ跡に生育する野生ヤムは、たんに新しい抜開地にヤムが侵入して形成されたものではなく、たしかにバカたちが互いに隔離された個体群から集めてきた複数のヤム片から再生したものであることが確かめられた。また、ハーディ・ワインベルグ平衡から外れているということは、収穫場所ごとの個体間において遺伝的交流が制限されていることを示唆する。ただし収穫場所同士は数十から数百メートルごとしか離れておらず、通常であれば遺伝的交流はあっておかしくない。となると、バカが収穫するタイプの野生ヤムは、有性繁殖にあまり成功していないのではないかという推測がなりたつ(そうであれば、地理的に近接している個体群同士でも、遺伝的には距離があることになる)。となると、この地域に分布する野生ヤムの分布構造は、バカとヤムとのながいあいだの関係をとおして構築されたと考えることができる。この地域のもっとも重要な森林資源のひとつである野生ヤムの分布にたいして、人びとの歴史的・継続的な関与が影響していたのではないかという論点は、いうまでもなくかれらの森林へのアクセス権について検討するさいに重要な意味をもってくるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに研究成果の一部について論文公刊、学会発表がなされ、またカメルーン東部州でのフィールドワークによる資料収集、フランス国立科学研究センター(CNRS)およびフランス開発研究所(IRD)における野生ヤムの遺伝系統分析実験も首尾よく実施された。以上から、研究は当初の計画どおり順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度のフィールドワークで得られた資料の分析を終えたので、それをもとにした論文を執筆し、国際学会で報告する。また、2014年夏にフィールドワークを実施し、ここまでの分析・考察をとおして新しく得られた論点について検討するための資料を収集し、2014年度中にその分析をして論文を執筆する。2015年度には、ここまで歴史生態学、および生物系統地理学的な研究成果をふまえて、バカ・ピグミーによる慣習的なNTFP(非木材森林資源)の利用が、国立公園の設置などに代表される今日の主流の森林保全・管理計画とどのように両立しうるかについて研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
74,272円が次年度に繰り越されたが、これはフィールドワーク用消耗品等の購入時期のズレによるものであり、計画の進行に影響するものではない。 次回フィールドワークの準備時に、消耗品の残りと調査内容について精査したうえで、必要なものを購入する。
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Research Products
(2 results)