2014 Fiscal Year Research-status Report
熱帯アフリカにおける森林資源利用の歴史生態学的研究と慣習的権利の確立へむけた応用
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24710296
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
安岡 宏和 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (20449292)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歴史生態学 / ブッシュミート / 生物(分子)系統地理学 / NTFP(非木材森林資源) / 熱帯雨林 / 国際情報交換 / フランス / カメルーン |
Outline of Annual Research Achievements |
2012年度および2013年度は、カメルーン東南部の熱帯雨林地域に住むバカ・ピグミーが利用している野生ヤマノイモを対象とし、その分布の特徴を分析するためのサンプル収集および分析実験を、フランス国立科学研究センターの共同研究者とともにおこなった。2014年度は、その結果の一部をまとめ、国際会議で報告した。また、本年度は、森林資源のなかでも野生ヤムとならんで重要な資源であるブッシュミート(野生動物の肉)に着目し、その利用の実態と持続性、および狩猟圧と資源量の関係について、データの整理と分析をおこなった。その結果、以下の二点が明らかになった。第一に、ブッシュミート交易の拡大を経て、狩猟動物の構成が変化したことである。調査地域における主たる獲物は森林性のウシ科ダイカー類であるが、2000 年代前半には体重15 kg 程度のレッドダイカー類が捕獲の大半を占めていた。ところが2012 ~2014年のデータでは、体重5 kg 程度のブルーダイカーが多く捕獲されていた。くわえて、調査地域における動物生態調査の結果を総合して分析すると、人口密集地に近いほど、レッドダイカーにたいするブルーダイカーの相対的な生息密度が大きくなる傾向があることが分かった。すなわち、高い狩猟圧の継続が地域の動物相の構成を変化させ、獲物が小型化したと考えられる。第二に、カメルーン東南部における現在の野生動物マネジメントには重大な不備があることが分かった。住民に狩猟され、日常的な食物として利用されてきた動物の大半は、カメルーンの狩猟法制において捕獲が禁止されており、この規制が厳格に適用されると、代替タンパク源が少なく、獣肉が主要タンパク源となってきた熱帯雨林では、住民の生活水準の低下につながりかねない。これは、住民の慣習的権利をどのようなかたちで保持することができるか、という本研究の問題関心において、重要な論点となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでカメルーン東南部にてフィールドワークをおこない、フランス国立科学研究センター(CNRS)およびフランス開発研究所(IRD)の共同研究者とともに、野生ヤムの分布にたいする人間による利用の影響を明らかにするための生物系統地理学的な研究を実施し、その成果をもとに、2013年度に査読付論文1報を出版しているが、2014年度は6月に開催された14th Congress of International Society of Ethnobiologyにて関連する内容を報告した。さらに現在、第2報を執筆中である。ブッシュミートにかかわる研究成果については2014年5月に日本アフリカ学会第51回学術大会にて、2014年7月に51st Annual Meeting of Association for Tropical Biology & Conservationにて報告した。また、2014年に1報の査読付論文を出版しており、他1報が査読中である。以上にくわえて、本研究に関連する内容の論文が収録された論文集An Integrated Study on Non-Timber Forest Products in Southeastern Cameroon: Toward Conservation and Sustainable Use of Tropical Forestの編集を共同研究者とともにおこなった。以上から、研究は順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、2014年度までに公刊した研究成果において残されていた課題を解決するために、再度、カメルーンにてフィールドワークを実施し、フランスの共同研究者とともに分析実験をおこなう。その結果を年内にまとめ、学術誌に投稿する。また、これまでの研究によって明らかになった、森林資源の分布にかんする歴史生態学、生物系統地理学的な知見が、国立公園等における森林保全管理の現状のなかで、地域住民の慣習的な権利を承認するためにどのように活用することかできるのかについて、関連する先行研究を網羅的に渉猟したうえで、総括的な議論をおこなう論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
2014年度は、当初、8月にカメルーンでのフィールドワークを予定していたが、諸事情により長期渡航の時間を確保できなかったため、これまで収集したデータをまとめ、研究成果を公開することを優先した。そのためフィールドワークのために確保していた予算を消費しなかったことにより、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主としてフィールドワークのための旅費およびフィールドワークのさいに使用する物品・消耗品の購入、フィールドワークでえられたサンプルの分析実験のために利用する予定である。また、総括的な論文を執筆するために関連図書の購入や、成果の公開等のための学会参加費、英文校閲費などにも利用する。
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Research Products
(6 results)