2013 Fiscal Year Research-status Report
非正規雇用のキャリアと雇用保障――1990~2000年にみる職域分離構造の変容
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24710302
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
首藤 若菜 立教大学, 経済学部, 准教授 (30323158)
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Keywords | 非正規雇用 / 自動車産業 / 雇用保障 / 組織化 / グローバル化 |
Research Abstract |
平成25年度は、製造業を対象に、ヒアリング調査を進めた。大手電機メーカー1社、大手自動車完成車メーカー2社、自動車部品大手メーカー1社の各労働組合を中心にヒアリング調査を繰り返し、うち1社については経営側への聞き取り調査、うち2社については工場調査を実施した。これらの研究の途中経過を平成25年5月末に開催された社会政策学会にて報告した。また、先進的モデルになりうるドイツの大手自動車メーカーの従業員代表組織と現地の労働組合に、平成26年3月にヒアリング調査をおこなった。 製造現場では、2000年代に非正規雇用者が増加しており、例えば自動車の組立現場では、多いところで約半数が非正規社員で構成される。近年の変化は、リーマンショック前は派遣労働者に依存していた工場において、派遣労働者から直接雇用の有期契約社員へと変化したことがあげられるが、非正規労働者の労働条件は大きく変わっていない。一部の自動車メーカーでは、非正規社員の勤続年数の長期化や、長期勤続者の組合による組織化、処遇の改善が取り組まれているが、現在までのところ、こうした動きは他社に広がりをみせてはいない。 企業の連結決算はリーマンショック後から大きく改善しているが、経営のグローバル化の影響により、国内工場における雇用確保と労働条件の維持・向上は容易でないと現場の労働者および労働組合は考えているようである。労働組合は、正社員の雇用を堅持しているものの、一部では雇用保障と引き換えに労働条件の低下を容認してきた。同じような状況下にあるドイツの自動車メーカーでは、国際的な労働組合ネットワークを形成し、労働条件の引き下げ競争に歯止めをかけようとしている。ドイツでのヒアリング調査では、この取り組みを詳細に聞いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連研究および資料の収集とヒアリング調査の実施は、計画通りに進んでいると考えている。ただ、調査が続いていたため、これらの調査結果や収集した資料を整理し、分析する作業が遅れているように思う。今一度、調査結果を見直し、仮説を検証したうえで、再調査を実施する必要があると考える。そのため、2014年度は、前半は実態調査をいったん中断し、これまでの調査結果・収集資料を整理し、分析する作業を進め、後半に、再度、追跡調査を実施する計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、前半は、2013年度におこなった実態調査と、これまで収集した資料、文献を整理し、分析する作業に重点を置くこととする。ヒアリング調査のデータは、ほぼテープ起こしを終えているが、調査結果を読み直し、企業間の比較分析に取り掛かる予定である。同時に、先進事例であるドイツの実態から、日本にどのような示唆があるのかを検討したい。ドイツ調査の成果の一端は、2014年6月に日本労使関係研究協会が主催する労働政策研究会議で報告する予定である。 2014年度後半には、これまで実施した調査の追跡調査をおこなうとともに、国内の自動車メーカー1社を調査対象に追加する計画である。国内自動車メーカーについては、主要企業3社の実態を分析したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、年度途中より、当初予定していなかったドイツ調査を実施する見通しとなり、当初の計画よりも支出が増えることが予想されたため、様々な節約を図った。例えば、聞き取り調査の対象をより近隣の工場や事業所に変更を依頼したり、洋書の購入を控える等の措置を取った。結果的に、ドイツ調査は平成25年3月半ばに実施されたため26年度の予算として支出されることになり、25年度の599,625円分が、次年度使用額となった。 平成26年度の予算においては、まず平成26年3月実施したドイツ調査に要した旅費、滞在費等をあてる。そのうえで、26年度は、前半に集中的に資料収集に取り組む予定であり、それに関わる図書費、印刷代等の経費を支出する予定である。後半には、国内調査として、一企業の経営者側と労働組合を訪問することを予定しているため、その旅費が必要となり、さらに調査結果のテープ起こしにかかる謝金を支出する計画である。その他、論文執筆にあたり、ドイツ調査先と英文論文での確認が必要になる場合には、英文校正のための謝金を使用する計画である。
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Research Products
(1 results)