2014 Fiscal Year Research-status Report
非正規雇用のキャリアと雇用保障――1990~2000年にみる職域分離構造の変容
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24710302
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
首藤 若菜 立教大学, 経済学部, 准教授 (30323158)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非正規雇用 / 自動車産業 / 雇用保障 / グローバル化 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、非正規社員の職域拡大により、正規社員のなかに従来存在してきたジェンダーに基づく職域分離構造がどう変化してきたのかを、キャリアと雇用保障の観点から検証することである。 本研究が対象とする自動車産業は、経営のグローバル化が急速に進展しており、そのことと非正規社員の職域拡大は関係が深い。そのため本研究では、グローバル化が及ぼす影響についても考察し、同時に、それへの対策が進んでいる海外の自動車メーカー労組にも分析対象を広げてきた。 2014年度は、2013年度末に実施したドイツ国内に本社を置く自動車メーカー、フォルクスワーゲン社の従業員代表委員会およびドイツの機械産業の産業別労働組合組織であるIGメタルのヒアリング調査の結果を整理した。フォルクスワーゲン社の従業員代表委員会は、2012年には派遣労働に関する憲章(Charter on Temporary Work for the Volkswagen Group)を労使間で締結した。これには、派遣労働者に関して、正規労働者との均等待遇の保障、教育訓練の提供、正規採用ルートの整備、雇用期間の上限(最大雇用期間36か月)そして従業員に占める派遣労働者比率の上限(1事業所で原則5%以内)などが定められている。かつこの憲章は、世界各地に約100拠点ある同社グループ全体に適用される。この研究成果は、日本労使関係研究協会で報告するとともに、論文にまとめ、それは2015年1月に刊行された。 本研究では、2012年~2014年にわたり、日系完成車メーカー3社の労使に、インタビュー調査をおこなってきたため、現在、フォルクスワーゲン社を始め外資系企業と日系企業との比較分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連研究の整理、関連資料の収集、ヒアリング調査の実施は、ほぼ計画通りに進んでいる。2015年度は、当初の予定通り、これまでの調査結果を整理し、論文の執筆を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、2014年度に引き続き、これまでにおこなってきた実態調査、収集した資料および文献を整理し、分析作業を進める。 いくつかの視角から分析を深める予定だが、そのうちの一つは、国際的なワークルールが、どのように各国の事業所に周知され、どれほど遵守されているのかという点である。たとえば、 フォルクスワーゲン社の従業員代表委員会は、定期的に、海外事業所の従業員代表者(主には労働組合の役員)を一同に集め、世界労組会議を開催している。そこでは、こうした憲章(同社は2009年に労使関係憲章(Charter on Labour Relations within the Volkswagen Group)も締結している)を遵守するように、現地の労組に憲章内容を説明し、取り組みの支援活動を強化している。こうした活動は、これまで調査をおこなってきた日系企業の労組も行っているため、その内容、範囲、対象などを比較分析していく。 もう一つは、こうしたワークルールの締結が、非正規雇用の職域拡大、従来非正規雇用が果たしてきた雇用調整機能、各職場の雇用形態による分業体制に、どう影響し、それらがどう変わろうとしているのかという点である。調査対象である日系企業の一労組は、2006年より非正規雇用の組織化を進めているため、その実態も詳細に調べ、検討していく。
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Causes of Carryover |
2015年3月下旬に、ジュネーブにある労働組合の国際産別組織IndustriALL、ベルンにあるSGU/USS(スイス労働総同盟)にてヒアリング調査および資料収集をおこなった。それらの調査は、2014年度内に行ったが、その精算が2015年度になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度予算から2015年度に繰り越した分は、主に2014年度末に実施した上述の調査の宿泊費や交通費にあてられる。
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