2014 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間期日本における社会事業とジェンダーに関する言説分析
Project/Area Number |
24710303
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡部 克哉 早稲田大学, 総合研究機構, 招聘研究員 (60578475)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ジェンダー / 社会事業 / 言説 / 女性運動 / 海野幸徳 / 消費組合 / 社会福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
両大戦間期にあたる1919年~1930年代前半を中心に,社会事業とジェンダーに関する言説を分析した。社会福祉とジェンダーの関係性が形成される過程において,どのような論理や思想が用いられ,意味づけられたかを検討した。 平成24年度は,社会事業研究者の文献を収集,整理し,女性運動との関係を踏まえたうえで,言説を分析し,平成25年度は,女性運動家の文献を収集,整理し,社会事業との関係を踏まえたうえで,言説を分析した。生江孝之,海野幸徳,田子一民などの社会事業研究者が「母性」と社会事業を結びつけたのに対し,女性運動家の岩崎盈子が「母性」と社会事業の結びつきを批判し,社会事業のあらゆる分野に女性が進出することを求めたことを対比的に論じた。 また,関連する研究として,平成24年度から平成25年度にかけては,平塚らいてう,奥むめお,賀川豊彦を中心に,女性と消費組合運動(生協運動)との関係に関する研究も行った。 本年度(平成26年度)は,前年度までの研究成果に基づき,第一次世界大戦以前の言説との比較や欧米の思想的受容を通じて,社会事業とジェンダーに関する言説の変容を検証した。特に,優生学者,社会事業研究者であった海野幸徳における「社会事業の性的分業」論と,当時の生物学に基づく性差論との関係を検討し,研究ノートとしてまとめた。 海野は,1920年代に「社会事業の性的分業」を唱え,「男性的な科学と技術」と「女性的な感性と体験」によって,社会事業が完成されるとした。「社会事業の性的分業」論のみならず,1910年代の優生学に関する著作においても,19世紀後半にイギリスで展開された生物学に基づく性差論が顕著な影響を与えたことを検討した。なお,この研究ノートは,海野の文献目録に記載されていない文献も記載し,「発行未確認」とされた書籍が「発売頒布禁止処分」とされた事実を指摘するなど,資料的価値もある。
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Research Products
(1 results)