2013 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ家族政策のもう一つの転換点―「育児手当」をめぐる政策過程に注目して
Project/Area Number |
24710304
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
石井 香江 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (70457901)
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 地域研究 / 比較研究 / 歴史社会学的アプローチ |
Research Abstract |
近年日本でも、職場と家族における男女の役割分業を、変化する現実に照らして是正し、「ワーク・ライフ・バランス」を推進する意味で父親の育児休業取得を目指すなど、育児休業制度の見直しが図られている。その際、2007年に「両親手当」を導入した後、育児休業を取得する父親が増えたドイツの経験が肯定的に参照されることが少なくない。本研究では1979年に施行された「母親休業」に代わり、1986年に「育児手当・育児休業」が導入されるまでの社会・政治過程に目を向け、家族・育児の担い手の定義や、手当・休業が認知される論理・文脈の歴史的変遷とアクターを跡付け、今日の「両親手当」に新たな角度から光を当て、その意味を再考する作業を行っているが、昨年も基本的にこの作業を継続し、あらたに1970年代から移民の背景も持つ家族への関心も高まっている点に注目し、夏にはドイツのボンにあるSPD文書館で関連資料(1970年代に公刊された家族報告書などに現れる移民の背景を持つ家族とその課題に関する記述を読んだ)の検討を行った。秋から冬にかけてはこの成果を土台にしながら、現在のドイツ社会における育児(就学前教育・保育)の問題と移民の背景も持つ家族に関する調査結果を検討した。昨年はさらに、教育学者フランク=オーラフ・ラードケが、「多文化間の対話」を批判する主旨で、2011年に発表した著書『文化は話せない』を学内の同僚たちと輪読しながら、各自の研究関心にひきつけて研究を進め、ラードケがここであまり注目していない「文化」と「言語」の関係に着目し、多文化主義、学校教育・就学前教育・保育、日本の状況を考察対象とすることで、新たな側面を浮き彫りにしようとした論文を共同執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までおおむね計画書通りに研究が進んでいると言えるだろう。日本語・ドイツ語による学会・研究会での報告も行い、様々な専門の方々からの意見を頂き、軌道修正をしつつ研究を進展させているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年はさらに、教育学者フランク=オーラフ・ラードケが、「多文化間の対話」を批判する主旨で、2011年に発表した著書『文化は話せない』を学内の同僚たちと輪読しながら、各自の研究関心にひきつけて研究を進め、ラードケがここであまり注目していない「文化」と「言語」の関係に着目し、多文化主義、学校教育、日本の状況を考察対象とすることで、新たな側面を浮き彫りにしようとした論文を共同執筆した。2014年度はこの成果と知見をさらに展開させるために、私自身の研究はもちろん研究会を継続していくつもりである。今年度はこの成果を踏まえ、2年間で跡づけてきた政治的言説と併行して、どのような社会的実践が両親及び父親、さらに時間が許せば、移民家庭によって営まれていたのか、市民の自主的取り組みの実態と限界を明らかにしたい。フランス社会の研究者が研究会に加わることになっているので、日独仏の三カ国間の比較の視点を加え、より多角的な分析視野を獲得したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
個人研究費等で購入した研究書籍もあったため、次年度使用額が生じました。 次年度使用額は研究書籍の購入費用に充当したく思っております。
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Research Products
(2 results)