2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24710305
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
北川 将之 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (00365694)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | インド / 国際情報交換 / 地方自治 / 女性 / 政治意識 / 政党 / カースト / 農村 |
Research Abstract |
本研究の目的は、インドの村議会で約20年前に導入された女性留保議席が、農村の貧困女性の政治意識にどのような影響を与えたのか、時系列的に検証することにある。平成24年度の研究は、研究実施計画に沿って整理すると、次の通りである。 研究論文と新聞記事等のサーベイとして取り組んだのは、インド社会科学研究所(ISS)の機関紙Panchayat Raj Updateおよびインド主要各紙の記事の分析である。2012年1月~12月の記事を対象に内容を整理したところ、女性の政治参加の高まりを伝える記事が多かったが、男性優位の風潮が根強いことを伝える記事もあった。また、ISS主催の国際会議「インド憲法第73次改正から20年」(2012年12月)報告書によると、過去20年間パンチャーヤット改革を推進・支援してきたインド政府関係者は、これまでの新たな地方自治の取り組みを部分的に高く評価しつつも、女性や少数派の選出議員に対する差別の風潮が依然深刻であるとの認識を示した。討論後の専門家の提言では、24時間体制で村議員を暴力から守る緊急支援制度を創設するべきこと、政党と村議会の関係構築の重要性が指摘されている。こうした文献資料サーベイから、政党の村議会への過度な介入が貧困女性の政治離れを招く、という構図が推論として浮かび上がった。特に調査対象とするカルナータカ州の場合、カースト対立が政策立案・実施段階で政党対立に転嫁してゆく傾向が強いと先行研究で指摘されている。この点に関しては書評論文(英文)にまとめて発表した。 なお、計画を立てた年度の初頭段階では2013年2月にインド農村調査を行う予定であった。だが、村選挙の時期が度々延期されたため、選挙と調査の時期が問題になった。選挙前後は村の人々は警戒して政治的な話を避けようとするため、現地調査は次年度に集中的に実施することに変更した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は平成24年度から26年度の3カ年計画で進めている。平成24年度終了時点の研究の進捗状況は、概ね順調である。その理由は、研究実施計画および平成24年度の研究実績の概要で示した通り、この年度では主に3つのことを行うことを目標としていたが、現地調査(予備的調査)を除いてほぼ達成されているからである。 本研究の目的は、インド農村の貧困女性の政治意識には、高揚期と停滞期といった時系列的な「波」があることを検証することである。研究の一年目である平成24年度は、先行研究や新聞記事等の文献資料サーベイを行い、そうした政治意識の波に関係する学術研究や具体的事例を探すことを計画していた。パンチャーヤット(インドの地方自治体)研究を行う現地研究機関の資料やインド主要各紙の記事を予定通り入手することができたため、文献サーベイは順調に進めることができた。特に、2012年12月にはパンチャーヤット改革から20年というテーマで国際学術会議がインド・ニューデリーで開催され、パンチャーヤット制度改革を推進してきた連邦閣僚やフィールドワークの専門家が集い、現状認識と今後の課題を報告した。この会議の内容をまとめた報告書から示唆に富む指摘が得られたことは、本研究テーマに関する先行研究を整理するうえで貴重な手がかりとなった。 ただし、予定していた現地調査に関して言えば、具体的には定点調査地の貧困女性の政治意識についての質問項目の予備的調査を行うつもりであった。農村の貧困女性への質問項目を幾つか準備した上で、最も効果的な回答が得られる質問の仕方を検討することを目的としていた。だが、この質問項目の立て方に関しては、来年度に現地研究機関とネット上の情報交換を通して検討する。そうすることで、本研究の3カ年計画が一部遅延することを回避することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、本研究の二年目にあたる。当該年度の研究実施計画は、次のとおりである。 1 研究論文のサーベイに関して言えば、インド農村の貧困女性の生活環境に関連する先行研究を探る。具体的には、インド南部のカルナータカ州を事例として、物価変動、食糧需給、農村開発プログラムの変化などを扱った研究あるいは政府の基礎統計データを収集する。 2 パンチャーヤット選挙に関する資料を収集する。新聞雑誌記事などの事例記述データおよび政党別の得票数などの選挙統計データを、インド新聞各紙の過去記事アーカイブや選挙管理委員会などのウェブ上で入手可能な範囲で収集する。また、パンチャーヤット選挙と州議会選挙の関連性を調べるため、州議会選挙に関するデータもサイト上で収集する。特に、貧困女性の政治意識の定点調査地がカルナータカ州であることから、同州で2013年初頭に実施されたパンチャーヤット選挙と、同年5月に実施された州議会選挙については、重点的に資料を集める。そして、政党対立が村議会に与える影響、または農村女性の選出議員に与える影響について検討するのに必要な資料を整理する。 3 インド現地調査を実施する。カルナータカ州のインド社会科学研究所の南インド支部と連携して、村の女性議員へのヒアリング調査を行う。質問項目については事前に当該研究所の研究員と情報交換を行い、その具体案の検討を重ねる。ただし、定点調査地の村の治安悪化が顕著な場合は、村の女性議員を当該研究所オフィスに招いて聞き取り調査を行う等の対策をとる。 平成26年度は、本研究の最終年度である。前年度の進捗状況を踏まえて不十分な点を補足しながら、本の執筆に取り掛かる。インド農村の村議会に女性留保議席が導入されて約20年間の変容について、本研究代表者が実施した過去の聞き取り調査データも用いて分析を行い、諸議論を整理して研究成果を発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の使用計画としては、先の述べた今後の研究の推進方策に従い、下記の支出を考えている。 当該年度では、具体的には研究論文サーベイおよびパンチャーヤット選挙に関する資料収集を行う。これらの文献資料(消耗図書など)の購入に合計で約50万円の支出を予定している。その内訳は、インド主要新聞記事とインド政府主要統計データの過去アーカイブの利用料(年間)が約36万円、書籍や研究資料の購入が約14万円である。更には、収集した文献資料を整理するにあたり、複写や製本、文具等の費用(約5万円)が必要になる。 また当該年度には、インド現地調査も予定している。インド南部のバンガロール近郊で、これまで定点調査を行ってきた村のフィールドワークを実施する。そして、村の女性議員への聞き取り調査を行う。そのための旅費(約30万円)が必要になる。 更には、これらの現地調査を実施するにあたり、現地の研究機関スタッフの協力が必要になるため、現地研究機関スタッフへの謝礼金(約5万円)の支出を予定している。ただし、研究協力の具体的な内容は今後検討してゆく予定であり、その謝礼金の金額も内容に応じて変更する。
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