2013 Fiscal Year Research-status Report
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24710305
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Research Institution | Kobe College |
Principal Investigator |
北川 将之 神戸女学院大学, 文学部, 准教授 (00365694)
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Keywords | インド / 女性 / 政治 / 選挙 / 地方自治 |
Research Abstract |
本研究の目的は、インド農村のパンチャーヤット制度(県・郡・村の議会)において女性留保議席が、貧困女性の政治意識にどのような影響を与えてきたのか検討することにある。以下では平成25年度の実施状況について、研究計画に沿って整理する。 (1)文献サーベイに関しては、インド社会科学研究所(ISS)の南部地域拠点(バンガロール)がまとめた報告書を基にして、地方議会の女性議員の属性資料を整理した。2000年のパンチャーヤット選挙のデータが一部欠損していたが、今年度に不足部分を収集することができた。また、バンガロール大学が1986年に実施したパンチャーヤット制度に関する意識調査(カルナータカ州)の報告書の内容を整理した。 (2)新聞雑誌記事の情報収集では、2013年5月に実施されたカルナータカ州の下院議会選挙に焦点をあてて、政党競合の構図を整理した。また、州選挙管理委員会のウェブサイト資料のサーベイについては、2005年のパンチャーヤット選挙結果(都市部・農村部の県と郡議会選挙)のデータを収集整理した。 (3)インド農村調査について言えば、2014年2月にバンガロールへ行き、カトリック教会カルナータカ教区の農村開発支援施設(CIRW)のディレクターに調査協力を依頼した。同施設が実施しているマイクロファイナンスの女性グループにインタビューを実施した。かつてパンチャーヤットの村議員として活動していたリーダー格の女性の話によると、前回の2010-11年の村議会選挙では、マイクロファイナンスのメンバーの中から立候補を出さなかったという。この事例は、本研究で検討している貧困女性の政治意識の「退潮」傾向を具体的に示す一例である。以前調査した他の村でも同様の傾向がみられた。こうした「女性の再周縁化」傾向に関しては、国内の研究会(現代インド研究INDAS国内全体集会、2013年11月)の口頭発表で述べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は平成24年度から26年度の3カ年の予定である。その二年目にあたる平成25年度終了時点の研究の進捗状況は、概ね順調である。主な理由は、本研究の主要課題である「インド貧困女性の政治参加の退潮傾向」、すなわち「女性の再周縁化」を示す具体的な体験談を、平成25年度に実施した現地調査で聞くことができたからである。 過去に調査(2004年と2006年)を行った村を、2014年2月に再度訪問した。その際、以前からマイクロファイナンス(少額融資制度)活動に取り組んでいる女性メンバーのリーダーと再会する機会を得た。彼女は村の長老の家に生まれた長女で、家族の男性が都市部に出稼ぎにいってしまったため、家の代表として、村の議会(グラム・パンチャーヤット)の議長に2000年選挙で出馬して当選した。当時彼女が熱心に語っていたのは、村の議会や住民集会(グラム・サバー)の重要性であった。だが、今回訪問したときに彼女が強調したのは、村の選挙や政党への不信感であった。政党競合が過熱するに伴い、暴力による威嚇や賄賂の要求などが増えたという。同様に、他の村の女性リーダーからも、政治不信に陥っていると聞くことができた。 本研究の当初の計画では、マイクロファイナンスの団体メンバー全員にインタビューをしようと考えていた。だが、リーダー格の人物に調査対象を絞る方が、より時間をかけて丁寧に話を聞くことができる。特に本研究の課題であるインド女性の政治参加の「退潮」を明らかにするためには、特定の人物のライフストーリーを時系列的に辿ることが重要になると考えられる。平成25年度の調査では、そうしたライフストーリーの聞き取りができた。 ただし、研究計画の文献サーベイに関しては、部分的に補足する必要がある。前述の「女性の再周縁化」について、先行研究がどの程度指摘しているのか、十分に調べられていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本研究の最終年度(三年目)にあたる。その研究実施計画は、次の通りである。 (1)本研究で着目しているインド農村女性の政治参加の再周縁化に関して、先行研究を幅広く検討する。文献資料(消耗図書など)の購入に合計で約30万円の支出を計画している。また、インド内外の研究者との交流を図り、研究施設訪問およびメールのやり取りを通して、パンチャーヤット選挙への女性の関わり方の変容を指摘した調査研究の進捗状況を探る。特に、インドの女性留保議席に関して「存在の政治」論を展開したE. Hust(ドイツのゲーテ・インスティチュート所属)等の研究者との学術交流の機会を探り、「女性の再周縁化」について他の研究者と積極的に議論を行いたいと考えている。欧州やアメリカの学会・研究会等への参加を検討する。国外への出張の場合、旅費として約20万円必要になる。 (2)本研究で取り組んできたインド貧困女性の政治参加の再周縁化について、論文を執筆する。なお、女性留保議席の導入後(1990年代から2000年代前半)に起こった女性の政治意識の高揚については、既に博士論文(2008年3月)で述べている。今後は、本研究の成果を博士論文に加筆修正する形で本にまとめる。論文・本の執筆のために、複写等の費用(複写、文具等)として約10万円が必要である。 (3)村の女性への聞き取り調査は、平成25年度にある程度のデータを収集することができたため、今年度は論文の執筆を進めながら、必要に応じて実施する。旅費として約20万円が必要になる。また、今年度(2014年4-5月)にインド連邦下院選挙が実施されることから、女性の選挙への関わり方に焦点をあてて、選挙関連の新聞雑誌記事を収集する。インド新聞記事アーカイブの利用(年間使用料約39万円)を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
インド連邦下院議会選挙の記事データを収集するため、新聞記事アーカイブの利用(年間使用料約39万円)を予定していた。政治情勢によっては平成25年度中に実施される可能性もあったので、アーカイブ利用の支出を計画していた。だが、2014年4-5月に実施されることが決まったため、平成25年度の補助金の一部(約39万円)を次年度に繰り越した。 2014年4-5月に実施されるインド連邦下院議会選挙の記事データを収集するため、新聞記事アーカイブの利用(年間使用料約39万円)に支出する。
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