2014 Fiscal Year Annual Research Report
功利主義と直観主義の論争に対するカント倫理学の影響とその現代的意義の考察
Project/Area Number |
24720004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 功利主義 / カント / 倫理学 / 思想史 / 直観主義 / 義務論 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日、功利主義は義務論、とりわけカントの倫理学と対比されて論じられる傾向にある。しかし、この対比が出てくる以前は、功利主義vs直観主義の対比が対立軸となっていた。本研究では、この対立にカントの倫理学はいかなる影響を与えたのか検討した。 初年度はベンタム以降の功利主義者(ミル、シジウィック、ハロッド、ヘアなど)が、カントの思想をどう理解したかの文献研究を行った。また、ロールズにおける義務論的発想の由来を検討した結果、フランケナの影響の重要性が示唆された。この研究については、関連する研究会で報告するとともに、以下の論文を公刊した。児玉聡、「功利主義批判としての「善に対する正の優先」の検討」、『社会科学研究』、64(2):49-72 (2013年3月)。 次年度は、Kant and His Influence(2005)所収のThe Early Reception of Kant's Thought in England 1785-1805(Giuseppe Micheli)やThe Cambridge Companion to Utilitarianism(2014)所収のKantian ethics and Utilitarianism(Jens Timmermann)などの文献の検討を通じて、カントがベンタム以降の英国思想の流れにおいてどのような影響を与えたのかおよびカント倫理学と功利主義の関係について検討した。 最終年度は、英国オックスフォード大学のRoger Crispや豪州モナシュ大学のRobert Sparrowなどの研究者と功利主義に関する意見交換を行うとともに、国際功利主義学会で苦痛や苦しみが規範倫理に対してもつ含意について研究報告を行ったほか、国内研究会で脳神経科学や進化論が規範倫理に持つ影響について報告し、検討を行った。
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