2013 Fiscal Year Research-status Report
友敵論の系譜的再構築を基軸とした「情動のデモクラシー」に関する哲学的研究
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24720008
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
宮崎 裕助 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40509444)
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Keywords | デリダ |
Research Abstract |
本研究の二年度目である25年度の研究実績は、初年度の成果を引き継ぎながら、以下の視点から、「情動のデモクラシー」を形成する根本的な諸論点を解明したことにある。 第一に「決断」と「情熱」。民主主義であれ資本主義であれ、近代の市民社会の制度は、質的に異なる特異な諸個人を均質化・数量化することで成り立っている。現代のデモクラシーにおける「決断」の論点のひとつは、私にとっての他者の存在を、「誰でもよい誰か」の偶然性のみならず「偶然的であるがゆえの必然性」としていかに肯定できるのか、という点である。デリダのキルケゴール論を手がかりとしつつ、この肯定性を、キルケゴールが信仰のうちに見出した「他者への情熱(Lidenskab)」として探究した。 第二に「労働」と「言語」。ポストフォーディズムと呼ばれる現代の労働形態が複雑になるにつれ、労働の本質はますます言語によって規定されるようになる。資本主義のこの言語は、しばしば劣悪な環境で労働に従事せざるをえない労働者の「感情労働(やりがい)」を鼓舞するための言語としても現れる。他方、デリダが民主主義の条件として見出したひとつの要点に「すべてを言う権利」としての言語の無条件性がある。言語活動のこうした無条件性の観点から、資本主義経済による感情労働の搾取という実態を批判的に考察し、労働の民主化の条件を模索した。 第三に、補足的な作業として、初期デリダの代表作『散種』の再読を通じ、以上のような言語の無条件性への観点を、プラトンからマラルメに至るミメーシス論の脱構築として再検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
後に示すように、学術雑誌の寄稿論文の公刊といったかたちで、成果を出すことができた。これは当初の計画で考えられていた水準をおおむね達成するものとなっている。ただし、友敵論に関する論考を発表できていないため、課題の達成は次年度以降に持ち越されている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は進展しているが、友敵論に関する研究に集中することで、これまで以上に、計画に合致した研究を進める。
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