2013 Fiscal Year Research-status Report
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24720010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸田 剛文 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (30402746)
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Keywords | 哲学 / イギリス経験論 / プラグマティズム |
Research Abstract |
24年度は、近代のイギリス経験論哲学において、現代のプラグマティズムの萌芽とも考えられる主張が見いだされることを明らかにしたが、25年度は、その研究をさらに詳細に推し進めた。特に、イギリス経験論の代表者の一人であると考えられているバークリによる自然法則の主張は、当時のロックなどに代表される自然主義的な哲学に対するひとつのアンチ・テーゼとしても考えることができるが、それが現代のプラグマティズムの中心的なテーマの一つである多元的な世界観の擁護と大きな類似性があると考えられることを明らかにした。 そのさい手掛かりとしたのは、バークリによる心身問題に関する主張であり、当時の生理学と彼の観念論がどのように両立しうるのかという議論を軸に行われた。バークリは、当時の観念の生成のメカニズムに関する生理学的成果をすべて否定しているわけではなく、それもまたひとつの自然法則であり、それは絶対的な実在についての主張ではなく、われわれの一つの捉え方である。そしてわれわれの意識に生じる日常的な経験についての捉え方もひとつの自然法則である。これらの自然法則は、一方が客観的・絶対的で、他方が主観的で相対的という単純な二分法によってとられられるべきものではない。むしろ多元的な世界の捉え方の一例をなすものであると考えられるべきである。そしてこういう彼の主張は、現代のローティやグッドマンなどとも大きな親和性を持つものだと考えられる。 この研究成果は、2013年の10月に台湾大学で行われた心身問題を中心テーマとした哲学フォーラムにおいて発表され、さらに、加筆修正を加えたものが、この夏に雑誌論文として掲載されることになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在イギリス経験論は多くの哲学者によって自然主義的な解釈が進められているが、それに限定されない先進性が見いだされることを明らかにし、またそれとプラグマティズムとの関係を示すことで、プラグマティズム的思想が歴史的にも重要なものであることを明らかにした点ではおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、古典的プラグマティストにおける真理観について考察する。古典的プラグマティストは、人間の可謬性をより明確に主張し、訂正可能なものとしての知識観を押し出した点で、デカルト主義を乗り越えようとするものである。しかし、伝統的には真理と意見は区別されてきており、彼らの真理観・知識観において知識とはいかなるものか、またそれを知識と呼ぶ正当性はどのようなものかということを明らかにしたい。 また、古典的プラグマティズムに見られるような知識観と相対主義との関係についても考察を深めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
コンピューター関連のものが価格が予想より下がったのと、海外発表についても招待講演という形になったため。 古典的プラグマティストの全集などをいっそう充実させる。学生を雇用し、資料の収集・整理などを徹底的に行う。
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