2014 Fiscal Year Research-status Report
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24720010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸田 剛文 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (30402746)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プラグマティズム / イギリス経験論 / 認識論 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、イギリス経験論のバークリ哲学におけるプラグマティズム的な側面に目をむけて研究を進めたが、今年度は、これまでの研究を踏まえて、さらに範囲を拡大し、バークリとジョン・ロック、および古典的プラグマティズムの代表者であるパースとウィリアム・ジェイムズの世界観の関係の研究を行った。 ジョン・ロックは、デカルトのような基礎づけ主義とは異なり、当時の自然科学を前提として哲学を展開した。そのとき、ロックは実在論の立場から哲学を展開しているが、バークリは、むしろその実在論を観念論の中に組み込もうとする方向て哲学を展開している。この対立構図は、しばしば客観的なものとして世界をとらえるのか、主観的なものとして世界をとらえるのかという対立としても捉えられることがある。しかし、両者の議論を改めて検討することにより、この主観主義と客観主義の対立は、それほど明確なものではないことが明らかとなる。 そしてこのロックとバークリのような関係は、アメリカのプラグマティストであるパースとジェイムズの関係と同じような構造をもっているというのが私の主張である。プラグマティズムはイギリス経験論からも多くの影響を受けおり、両者に類似関係が見出されること自体は、必ずしも奇異なことではないだろうが、この研究では、大きな両者の類似関係を確認しながらも、その違いにも着目し、その比較検討を通して、主観性と客観性の関係を探ろうとするものである。そして主観性にも客観性にも還元されない、一種の二元論の可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジェイムズとパース、ロックとバークリの関係を研究する過程で、議論の大きな枠組みはかなり整理されることになった。特に、イギリス経験論とプラグマティズムに共通に見られる反デカルト主義的(反基礎づけ主義的)な知識観の比較を通して、われわれから独立した世界があるという信念がどのようにして扱われているのかということが明らかになりつつある。ジェイムズは、真理を実在との対応と述べ、いっけんしたところ真理の対応説を述べているようにも見えるが、しかしその一方で、実在がいかなるものであるかを考察することにより、むしろ整合説を展開しているように見える。この主張は、世界の主観的な側面と客観的な側面を考察する重要な主張であり、彼の主張と、バークリやロック、パースと比較することで、それぞれの議論の利点、問題点を明らかにしつつある。またその過程で、具体的に検討しなければならない課題も明らかになり、研究は順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、バークリとロックの対立関係および類似関係、そしてそれらの考察からどのようなことが世界観を考える上で問題となるかについては、かなり明確になっている。そして今回の研究で、古典的プラグマティズムを代表する三人の哲学者の中のパースとジェイムズの関係についてその大枠を確認することはできた。しかし、それぞれの哲学者が実在や真理を巡ってどのように考えているのかについて、さらなる詳細な検討と、現代までの研究者の議論を参照する必要がある。また、そういったプラグマティストとイギリス経験論者の世界観の関係についての私の見解について、イギリスを中心としたイギリス経験論の専門家と意見交換をするつもりである。 例えば、バークリをはじめとした近代哲学の代表的な研究者のひとりであるヨーク大学のTom Stoneham教授などを考えている。
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Causes of Carryover |
購入予定だった書籍が直前になって出版社に在庫がないことが判明した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に別の書籍を購入する。
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