2012 Fiscal Year Research-status Report
内部告発の多角的分析を通じた「規範性の境界」に関する哲学的研究
Project/Area Number |
24720018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
奥田 太郎 南山大学, 人文学部, 准教授 (20367725)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 規範性の境界 / 内部告発 / 公益通報者保護法 / 普遍化可能性 |
Research Abstract |
本研究は、内部告発という具体的なテーマを哲学的に研究することを通じて、最終的には、規範性一般の内部と外部とを分かつ境界がどのような性質のものであり、いかなる条件によってそれぞれが成立するのか、という規範性の境界問題に応えることを目的としている。 本年度は、研究実施計画に従い、公益通報者保護法に関する行政文書と関連書籍の収集を行うとともに、規範性に関する哲学的な研究文献も収集した。 本年度の成果としては、2010年に発表した拙論「内部告発の倫理的次元」(『社会と倫理』第24号、201-215頁)を加筆修正の上、英語論文"Whistleblowing as a Human Condition: A New Philosophical Approach to Boundaries of Normativity"として改訂執筆を行った。(時期は未定だが、近刊の研究論集に収録される予定である。)本論考は、本研究課題における内部告発理解の屋台骨を形成する重要なものであり、今後実施予定の海外の研究者との議論を促進することにつながると期待される。 また、日本国際政治学会2012年度研究大会での報告「人道支援の倫理―博愛か偏愛か」、および、『哲学と現代』第28号収録の論考「災害廃棄物の倫理学への試論―〈負〉の財としての廃棄物から復興・減災を考える―」での議論も、内部告発を扱ったものではないが、規範性の境界に関する本研究と基本的な問題意識を共有するものであり、自身の哲学的洞察の深化を促した。 さらに付け加えるなら、本年度に上梓した拙著『倫理学という構え―応用倫理学原論』において、倫理学的探求に対する自らの姿勢を示すことで、本研究課題遂行上の方法論的地歩を固めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、本年度において「トナミ運輸」の事例を研究・分析する予定であったが、他の用務やスケジュールの関係上、着手することができなかった。また、内部告発とみなしうるかということそのものが議論の的になりうるウィキリークスの事例についても詳細に研究する必要があることに気づき、急ぎ文献の収集に着手したが、研究そのものの進展にまでは至らなかった。これら、事例研究の進行の遅れが、上記自己点検評価の主たる理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成26年度には、内部告発に関する哲学的な分析を試みる論文、および、規範性の境界問題に関する哲学的な分析を試みる論文の2本を執筆する予定であり、それらの内容を踏まえた国際学会での報告をも視野に入れているため、次年度(平成25年度)の研究遂行がきわめて重要となる。本年度積み残した「トナミ運輸」の事例とウィキリークスの事例についての研究、および、社会心理学、人類学、社会学などの隣接領域における規範性の境界問題に関わる研究の調査を速やかに進めていく必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(3 results)