2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720020
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
竹花 洋佑 大谷大学, 文学部, 非常勤講師 (60549533)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 哲学 / 日本哲学 / 田辺元 / 西田幾多郎 / 象徴 / 共同性 |
Research Abstract |
本年度は、後期田辺哲学における象徴概念の意義を明らかにするための基礎的作業として戦前の田辺哲学を主に以下の三つの観点から明らかにする研究を行った。 (1)田辺の思想形成において西田哲学が果たした役割、具体的にいえば、西田の「絶対無」を厳しく批判したはずの田辺がなぜその後その概念を受容することになったのかという問題を、『ヘーゲル哲学と弁証法』における田辺の思想を発展史的に精査することを通して明らかにした。 (2)田辺が戦前・戦後を通じて一貫して「種」の概念に込めているNatur in Gott(神における自然)あるいはプラトン的質料という考えの持つ意味を田辺による「種の論理」の修正の問題との関係で捉えることを試みた。 (3)西田哲学と田辺哲学を共に「生の論理」として把握した場合、田辺の「生の論理」が西田のそれのように決して生命の表現の論理とはならないという点に田辺の独自の視点があることを解明した。 本研究の目的との関係でいえば、この中で特に重要なのは(2)と(3)の研究である。本研究は、田辺の「絶対媒介の論理」の中心概念である否定的媒介性の所在が戦後においてはそれまでの「種」から「象徴」へと移行しているにもかかわらず、戦後において「種」の概念が重要なものとして残り続けているのはなぜかという問いを明らかにすることを大きな課題とするものであるが、(2)で明らかにした「種」の概念の性格はこのことを明らかにするために欠くことのできない観点である。また、田辺は「象徴」という概念を常に「表現」との対比で用い、後者に対する前者の意味を強調するが、このような枠組みが最初に形成されていく場面を(3)の研究で明らかにしている。 また、具体的な研究成果としてはまだ公にはされていないが、ヤスパースとの関係で田辺の「象徴」概念の意味を捉える作業および後期田辺哲学の読解の作業も進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
田辺の「象徴」概念を理解するための基礎的な研究については計画通り行なわれているが、「象徴」概念そのものの発展史的な読解の作業については若干の遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に予定されていた研究は、上述の(2)と(3)の研究において部分的に完了している。したがって、本年度は当初予定されていた研究からこの(2)と(3)を除いたもの、つまり「象徴」概念と「実存協同」との関係の理解と、24年度において十分に行なわれなかった「象徴」概念の発展史的解明とを研究の中心としていくことにしたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に必要な備品はほぼ設置されているので、本年度の研究費の支出の中心は文献の購入にあてられる。また、学会・研究会等で本研究の成果を積極的に公開していくことを考えているので、そのための旅費も研究に計上される予定である。
|
Research Products
(3 results)