2013 Fiscal Year Research-status Report
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24720021
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 眞司 北海道大学, 文学研究科, その他 (60553047)
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Keywords | 北宋 / 義利観 / 性説 / 政治改革 |
Research Abstract |
本年度は、北宋期の慶暦・煕寧・元豊期の改革期に活躍した士大夫達の義利観と性説の相互関係を検証した。 義利観について、石介・司馬光・程頤の義利観は、義と利を比較した場合は利よりは義を重視する孟子以来の伝統的「重義軽利」(又は「先義後利」)という義利観を提示している。胡えん・孫復・范仲淹は、国家が利を興すという積極的な富国政策を求める。特に胡えん・孫復の義利観は、「性を正す」ことによって、はじめて「美利」としてその利(営利活動)が評価できるものであるとし、「重義軽利」の義利観と功利主義的義利観の中間てきな義利観である。李覯の義利観は、孟子の説く「重義軽利」の義利観を否定し、より一層強く利を求める義利観を展開しており、彼の義利観は功利主義的傾向を有する概念である。王安石・蘇軾・蘇轍の義利観は、彼らの義利観は義と利を両立させる「義利一致」的性格を備えたものである。 性説について見ると、性善説、又はそれに近い性説を唱える士大夫には、胡えん・孫復・石介・范仲淹・程頤らがおり、「重義軽利」的価値観、又は多少なりともその性格を帯びた義利観を持っている。ただし、司馬光は楊雄の性善悪混在説を支持している。功利主義的義利観を主張する李覯は、韓愈の性三品説を踏まえた性説を展開し、「義利一致」的義利観を主張する王安石・蘇軾・蘇轍は無善無悪説を提唱する。欧陽修は、性説を唱えることを否定している。 士大夫の義利観と性説の関係を概観すると、性善説と「重義軽利」の義利観を支持する士大夫達の多くが、慶暦の改革期に活躍した士大夫達であることがわかる。性善説を否定する士大夫達の多くが、煕寧・元豊期の改革期に活躍した士大夫達である。それぞれの改革の中心人物に、「「重義軽利」の義利観を支持する士大夫達は存在するが、時代が降るにつれて、その中心人物には、性説・義利観ともに異なる士大夫が台頭してくることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三蘇の経学と経学に見える義利観を研究し、北宋諸学者との思想的関連性を考察することは達成できたと考えられる。しかし、蘇轍の経学、特に、『春秋解』の分析が不十分であったことは反省すべき点である。但し、最終年度に行う予定の、三蘇の義利観と北宋儒学者との思想的関連性や時代性の一端を分析・検証を行うことが、本年度にできた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては、蘇洵の義利観に関しては、拙稿「蘇洵の経学」(『中国哲学』2007年)で提示した論点を踏まえて再検討をする。蘇洵には、特定の経書に対する解釈書が存在しないため、蘇洵の文集である『嘉祐集』に集録されている文献を分析し、蘇洵の経学を考察する。 蘇轍・蘇洵の思想と北宋諸学者の思想的関連性を分析し、彼らの経学とそこに見える義利観の特色をそれぞれ明確にし、二人の経学が持つ時代的意義を考察する。 上記の作業を終えた後、三蘇の経学について義利観をひとつの指標として整理し、三蘇の主張が相違する点からは三者の各々の経学の特色を、共通する点からは三蘇が持つ全体的な特色を、それぞれ明確にする。三蘇の経学の北宋の経学における位置づけを行い、時代的意義を再考する。 さらに、三蘇父子(父蘇洵と子の蘇軾・蘇轍兄弟)の経学の特色と相互の関連性、及び北宋期の学術・思想情況の中における三蘇の経学の思想的位置付けに関する研究について、得られた結果を取りまとめる
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Research Products
(1 results)