2013 Fiscal Year Research-status Report
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24720023
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菊谷 竜太 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (50526671)
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Keywords | インド密教 / 曼荼羅儀軌 / 成就法 / ジュニャーナパーダ / ラトナーカラシャーンティ / ヴィタパーダ / アバヤーカラグプタ / 『秘密集会タントラ』 |
Research Abstract |
(1)『四百五十頌』及び,ラトナーカラシャーンティ,ヴィタパーダの両注から得られた情報を対照させつつ『ヴァジュラーヴァリー』に説かれたプラティシュター儀軌の解析を進めた。アバヤーカラグプタが『四百五十頌』を解釈するにあたっての根拠や彼が伝承する儀礼体系の典拠が一体どこに求められるのか,ジュニャーナパーダ流の典籍を中心に,『アームナーヤマンジャリー』など,周辺の密教文献を視野に入れ解析した。ジュニャーナパーダ流における生起次第の系統としては,1)タガナ・ラトナーカラの師弟関係と,2)ヴィタパーダ・ヴァーギーシュヴァーラキールティ間の伝統という二つの相承系譜に注目し,これらの系統がアバヤーカラや他の継承者にどのような影響を与えたのか系統付けることが出来た。 (2)ジュニャーナパーダ流を含む密教のプラティシュター儀軌を精査し,成就法と一緒にその類型化を行う。チベット大蔵経収録のプラティシュター文献は30点を数えるが(Bentor[1996]),それらの文献の系統と成立史を巡る文献学的な解析は充分とは言えなかったが,密教におけるプラティシュター儀礼を知る上で,手始めにジュニャーナパーダ流に関わる成就法とそれと併せた儀礼文献の類型化を行った。 (3)上記(1)・(2)に関して,従来あまり注目されることのなかった近代における真言宗とチベット仏教との接点に着目し,彼らの交流のなかで実際に行われた灌頂儀礼の実施状況をチベット・日本側双方の資料を対照させることによって明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の活動において『ヴァジュラーヴァリー』を始めとするアバヤーカラグプタの曼荼羅儀礼に関する資料,ならびにその他の成就法・曼荼羅儀軌に関するサンスクリット写本・チベット語資料については,現在国内で入手し得るほぼすべての資料を複写することが出来た。さらに,従来はほとんど注目されることのなかった近代における満蒙資料に注目し,インドからチベット仏教世界に至る灌頂儀礼の実施内容を明らかにする作業も順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績に記した(1)・(2)の作業をさらに進めながら,(1)の解析に必要な複数のサンスクリット写本をケンブリッジ大学図書館において調査する予定である。2013年3月にカルフォルニア大学バークレー校で開催されたタントラワークショップにおいて,ハルナガ・アイザックソン教授とペーター・スザンゾ博士から『四百五十頌』の新出写本の情報を得ることが出来た。また,ケンブリッジにはジュニャーナパーダ流に関連する複数の写本の存在が知られ,そのうちの幾つかはデータで保持しているものの,細部においては可能な限り肉眼で確認する必要がある。また(3)においても,引き続き調査を進め,可能な限り(1)・(2)へのフィードバックに努める。
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Research Products
(5 results)