2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720035
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福家 崇洋 京都大学, 大学文書館, 助教 (80449503)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 転向 / 共産主義 / 二・二六事件 / 学生運動 / 全体主義 / 1930年代 |
Research Abstract |
本年度は以下の4点において研究を進めた。1 国内外機関所蔵資料の調査・収集 調査対象の時期は1930年代から50年代まで、対象内容は元日本共産党幹部で「転向者」の佐野学、鍋山貞親の軌跡と思想、また共産主義、社会民主主義を中心とする社会思想史、社会運動史、政治史で、調査先は国内では国会図書館及び同館憲政資料室、同志社大学人文科学研究所図書館、京都大学附属図書館など、国外ではアメリカ国立公文書館及びスタンフォード大学フーバー研究所文書館である。2 データ・ベースの作成 上記1で収集した資料の整理及びデータ入力をアルバイトに進めてもらい、その一部はすでにHPで公開した。3 成果の公表 「2012年度研究計画」で予定していた佐野学、鍋山貞親らの研究は2013年6月の研究会発表を経て、論文集に掲載することが決定している。また本年度は(1)『日本ファシズム論争』(単著、発行所河出書房新社)、(2)「1930年前後における京大学生運動」(『京都大学大学文書館研究紀要』)、(3)「京都民主戦線についての一試論」(『人文学報』)(4)「二・二六前夜における国家改造案――大岸頼好『極秘皇国維新法案 前編』を中心に」(『文明構造論』)を発表した。4 新たな知見 (1)では1930年代末以降の転向思想の一つ「全体主義」論を整理したうえで知られざる戦時抵抗の側面を描き出した。(2)では「転向」前における京大学生運動と共産党及び共産青年同盟との関係を、(3)ではコミンフォルム批判前後における共産党の民主民族戦線の動向を描いて来年度研究の布石とした。(4)では従来「転向」が左派社会運動においてのみ検討されてきたが、右派社会運動、とりわけ二・二六事件への影響を検討し、北一輝の改造法案と並ぶもうひとつの改造法案を生み出していく過程を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国内外機関所蔵資料の調査・収集も当初の計画以上の成果を得ることができ、今後のデータ・ベース作成及び研究成果の発表に有益に働くことを確信している。また、本年度の「研究目的」「研究計画」に記した佐野学、鍋山貞親らの研究は2013年6月の研究会発表を経て、論文集に掲載することが決定しており、当初の計画通りの成果を上げることが可能になった。また本年度は上記の当初計画に加えて、「転向」の新たな知見を掘り起こす単著1冊及び論文3本も追加で発表するなど、翌年度以降の研究計画の実施に向けた準備も大幅に進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果をさらに発展させながら、今後は当初の研究内容、研究計画に沿って研究を推進していく予定である。本年度は「転向」現象の発端となった佐野学、鍋山貞親ら共産党幹部に視点を絞って研究を進めたが、来年度はより広い視点から、さまざまな地域資料に基づきつつ、「転向」の広がりの実態と位相を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(5 results)