2013 Fiscal Year Research-status Report
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24720035
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福家 崇洋 京都大学, 大学文書館, 助教 (80449503)
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Keywords | 転向 / 民主社会主義 / ファシズム / 日本共産党 / 日本社会党 / 民族 / 人民戦線 |
Research Abstract |
本年度は以下5点で研究を進めた。 1 国内外機関所蔵資料の調査・収集 調査対象の時期は1930年代から1950年代まで、対象内容は元共産党関係者の「転向」、地域における「転向」の諸相、戦後の転向論と、これらに関連する社会思想史、社会運動史、政治史、地域史である。調査先は、国内では国会図書館及び同館憲政資料室、同志社大学人文科学研究所図書館、京都大学附属図書館、法政大学大原社会問題研究所図書館、京都府立総合資料館など、国外ではスタンフォード大学フーバー研究所文書館である。 2 聞き取り調査の実施 関東地方で転向問題関連の聞き取り調査を行い、同時に所蔵資料の調査も合わせて行った。 3 データ・ベースの作成・公開 上記1で収集した資料の整理及びデータ入力を進め、その一部をホームページで公開した。 4 成果の公開 昨年度執筆し論文集に掲載予定だった元共産党幹部佐野学、鍋山貞親の「転向」に関する論稿は、論文集刊行延期に伴い『文明構造論』に「一国社会主義から民主社会主義へ――佐野学・鍋山貞親の戦時と戦後」の題で発表した。本年度は「「戦後思想」における転向論」について研究会で発表の上前倒しで執筆し、これを来年度に佐野・鍋山論文の代わりとして上記論文集に掲載予定である。本年度は地域における「転向」の諸相に関する論稿も執筆したので、来年度に内容を精査の上で投稿する予定である。これら以外に「中井正一関係資料解説」(『京都大学大学文書館研究紀要』)なども発表した。 5 新たな知見 「一国社会主義から民主社会主義へ――佐野学・鍋山貞親の戦時と戦後」は彼ら共産党幹部の「転向」を再照射し、そこに一国社会主義及び反ファシズムへの志向が存在したこと、また彼らの一国社会主義運動や反共運動が戦後は民主社会主義に接合されていく過程を初めて明らかにし、従来の「転向」観及び戦時と戦後の連続性について問題提起を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国内外機関所蔵の調査・収集、聞き取り調査も当初の計画以上の成果を得ることができ、今後のデータ・ベース作成及び研究成果の発表に有益に働くことを確信している。昨年度執筆した共産党幹部佐野学・鍋山貞親の「転向」に関する論文は論文集刊行延期のため当初と予定が異なったものの、着実に今年度に公表することができた。また、今年度調査を推し進めた地域における「転向」に関する研究も順調に進行し、来年度学術雑誌に投稿予定である。また最終年度に調査を進める予定だった戦後の転向論に関する研究も前倒しで調査し、その成果をすでに研究会で発表し上記論文集に発表予定であるなど、いずれの研究も当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究テーマを総括する最終年度であり、これまで発表してきた論文を改めて振り返りながら、「転向」に関する新たな知見と充実した報告内容を成果としてまとめる予定である。また、これまで収集してきた資料のうちとりわけ貴重な資料はホームページなどで公開するなど発信にもこれまで以上に力点を置く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定の物品を一部見合わせたことなどの理由で次年度使用額が若干生じた。 物品購入費に繰り越すなど、申請した計画に基づき十全な成果をあげることができよう適正な使用を計画している。
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Research Products
(3 results)