2012 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の左派社会運動―継続する帝国経験と朝鮮戦争・ベトナム戦争―
Project/Area Number |
24720036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
黒川 伊織 神戸大学, 国際文化学研究科, 研究員 (50611638)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 文化運動 / 平和運動 |
Research Abstract |
本年度は,峠三吉主宰のサークル詩誌『われらの詩』復刻版刊行のため,解題執筆者に協力して復刻版刊行に向けた資料調査を行った。本復刻版は,2014年6月に三人社より刊行される予定である。また,『われらの詩』についての調査をすすめる過程で同時に調査をすすめていた朝鮮戦争期広島での反米反戦運動についての論文「〈まいおちるビラ〉と〈腐るビラ〉―朝鮮戦争勃発直後の反戦平和運動と峠三吉・井上光晴」を執筆し,本論文は日本社会文学会『社会文学』第38号に掲載される予定である。本論文は,これまで占領下の被爆地広島でなされた反原爆アピールとして神話化されてきた朝鮮戦争勃発直後の反米反戦運動の経験を,同時代の左派社会運動一般のなかに位置づけ直すことを意図して執筆したものであり,今後の平和運動・文化運動研究の方向性に一石を投じたものと考えている。 このような研究成果に加えて,1960年代後半から1970年代前半に神戸で取り組まれたベトナム反戦運動について,資料収集・当事者からの聞き取りを行った。その成果は,日本思想史学会で「地域ベ平連とアジア―「ベ平連こうべ」の事例を中心として」と題する研究報告を行うとともに(2012年10月28日,愛媛大学),論文「神戸におけるベトナム反戦運動の経験:1965年~1978年」(神戸大学メディア文化研究センター『メディア文化研究』第1号,2013年3月)として発表した。ベトナム反戦運動といえば小田実らの「神楽坂ベ平連」の活動がつねに想起されるなか,小田らとはちがうかたちでの運動を展開した「ベ平連こうべ」の活動を明らかにしたこれらの研究成果は,近年事例発掘がすすむ地域ベ平連研究に資するものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第二年度に実行予定であった神戸におけるベトナム反戦運動関係者の方々からの聞き取りがスムーズに行え,さらに関係者の方々のご支援により,より多くの方々からの聞き取りをさせていただくことができた。 広島の研究についても,本研究課題をすすめる基本的前提となる『われらの詩』の復刻版刊行に目処がついたため,次年度以降はこれを材料として,「われらの詩の会」の同人それぞれの活動について検討を進めることになろう。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度においては、今年度に聞き取りに応じてくださった方々のご紹介により、より多くの当事者の方々から聞き取りをすすめるとともに、散逸してしまっている関係資料の収集につとめていく。 神戸におけるベトナム反戦運動についての研究をすすめていくうえでは,とくに文学者の運動への関わりが重要な前提となってくるため,文学運動という視点からの整理を試みていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(3 results)