2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24720046
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Research Institution | Kyoto City University of Arts |
Principal Investigator |
深谷 訓子 京都市立芸術大学, 美術学部, 准教授 (30433379)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バロック / 制作 / オランダ絵画 / 美術理論 / 絵画論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、オランダ17世紀の美術文献において表明された「制作論」を網羅的に収集し、それらのテクストの分析を行うことで、オランダ17世紀美術の「制作論」の全貌を得ること、さらにそうした制作論と実作品の比較検討を通じて、オランダ17世紀絵画に関する理解を深めることにある。前年度までに、カーレル・ファン・マンデル『画家の書』、フィリップス・アンゲル『絵画芸術礼賛』、サミュエル・ファン・ホーホストラーテン『絵画芸術の高き学堂への手引き』などの読解にあたり、またこれらに関する先行研究の成果の検討も行って、考察を進めてきた。 本年度は、まず、オランダ17世紀に執筆された美術関連のテクストとして挙げられるアドリアーン・ファン・デ・フェネの『五月の嘆き、あるいは仮象を見る者』を検討した。その結果、これは確かに絵画論といいうる内容を有しているものの、制作と直接関連する部分はほぼ見当たらないことが明らかとなった。次に、ウィレム・フーレーの著作『絵画芸術全般の実践への手引き』(初版1670年)の読解を行い、その内容を整理した。こうした作業により、全般的な写実性の高さから描写の芸術とも称されてきたオランダ17世紀絵画において、写生素描やその蓄積、それらに用いられる画材や、画材とモチーフとの関係、さらにそうした写生的な制作と、実物を眼前にせずに描くプロセスとの関係とが如何に論じられてきたかということなど、実際の制作のプロセスの論じられ方をかなり具体的に追うことができた。 また世紀の後半になるに従って、絵画論の中に、中国や日本などアジアの事例に関する情報も収録されるようになっていく傾向も捉えることができた。これらは、その情報源やオランダにおける興味の広がりなど、研究上の新たな関心に結びつきうるものであるため、直接的に制作にかかわるものではないが、そうした情報についても整理を進めた。
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