2013 Fiscal Year Research-status Report
ロシア正教古儀式派イコンにおける図像上の特徴に関する研究
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24720052
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
宮崎 衣澄 富山高等専門学校, 国際ビジネス学科, 准教授 (70369966)
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Keywords | ロシア正教古儀式派 / イコン |
Research Abstract |
今年度はロシア伝統文化への回帰現象が顕著となった、19世紀中期以降の古儀式派イコンについて分析を行った。この時代には古儀式派イコン画家の活躍の場が拡大し、腕の良いイコン画家は宮廷や国家教会の注文を受けてイコンを制作した。一例をあげると古儀式派の出身で、ムスチョーラでイコン画を学んだディカリョフ(?-1917年以降)はモスクワへ移住し、皇帝家族の注文も受ける一流のイコン画家になった。彼が19世紀末~20世紀初頭にペテルブルグの大理石宮殿の聖母神殿奉献教会用に描いた聖人暦シリーズでは、聖人は二本指の手の形で描かれる。ディカリョフは古儀式派とのつながりを保ち、ラゴージュスコエ墓地の聖母庇護聖堂のイコンを、イコン画家О. チリコフ(?-1903)と共に修復している 。またディカリョフは同じくムスョーラ出身のイコン画家Н. チューリンと共に、1888年のアレクサンドル3世の列車事故からの救済を記念して、アレクサンドル3世家族の守護聖人を描いたイコン「選ばれし聖人」を制作している。このイコンにおいても、聖アンドレイ・クリストスキーは二本指の十字の手をしている。これらの例が示すように、19~20世紀初頭のロシア社会において、古儀式派とそのイコンは、古いロシアの伝統文化の担い手として再解釈されるようになった。その中で、古儀式派が主張する二本指、キリストのIСという綴り方が描かれたイコンは、それだけでは破壊や没収の対象にはならず、国家教会や皇帝周辺といった公的な場でも認められるようになったのである。モスクワなど大都市においては同じイコン画家が正教会用、古儀式派用とイコンを描き分けた。古儀式派のシンボルについては、古儀式派信仰を意識した場合と、古い像から写し絵を取った場合があり、より注意深く分析する必要がある。古儀式派イコンにおいても、背景描写や建造物を中心に、西欧絵画の影響が顕著にみられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は古儀式派が描いた図像とその特徴を明確化し、古儀式派イコンか否かを推定する際の一つの手がかりを示すことである。昨年度明確になったイコンに関する国家教会の規定と古儀式派の言説を基礎に、今年度は具体的にイコンを調査して、その分析を行った。古儀式派出身でありながら、正教会用と古儀式派用の両方のイコンを制作したディカリョフなどのイコン画家の作品を収集し、具体的な図像上の特徴の把握を進めている。 研究成果は、第二回古儀式派研究会で報告し、雑誌セーヴェルに掲載された。 またモスクワのラゴージュスコエ墓地を訪問し、近年修復が進んでいる古儀式派イコンを調査し、修復家と意見交換を行った。歴史博物館、アンドレイ・ルブリョフ美術館においても、古儀式派出身のイコン画家ペシェホノフ他の手によるイコンの調査を行った。今後さらに調査点数を増やし、分析を深めることによって、古儀式派出身イコン画家が考える、古儀式派イコンと正教会イコンの違いが明確化されよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き、国内で入手可能な文献資料やイコン画像を収集する。近年は古儀式派イコンは個人コレクターの収集対象となっているため、美術館以外のコレクションについても調査を行う。そして古儀式派のイコンカタログの作成を進める。これらの資料をもとに、古儀式派イコンと正教会のイコンの差異について検討する。 今年度はモスクワでイコンの現地調査を行った。来年度は著名な古儀式派出身イコン画家の作品が多く所蔵されている、サンクトペテルブルグのロシア美術館、宗教史博物館等を訪問し、より多くのイコンの調査を行う。また、ロシア美術館の古儀式派イコン研究者と意見交換を行い、今後の研究に関する助言をいただく。 可能であればヴァラーム修道院から疎開してきたイコンが所蔵されているフィンランドのクオピオの正教美術館を訪問し、イコンの調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
差額はH24年度に現地調査に行くことができなかったために生じた。次年度、サンクト・ペテルブルグとモスクワに現地調査に行く費用に充てる予定である。 次年度は、サンクト・ペテルブルグのロシア美術館、エルミタージュ美術館等で古儀式派イコンの調査を予定している。また11月に行われるロシア文学会での発表のための旅費、その他国内の学会や研究会に参加・発表するための費用を見込んでいる。 また今年度同様、古儀式派関連の文献とイコンアルバム等を購入する予定である。
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Research Products
(3 results)