2013 Fiscal Year Research-status Report
18~19世紀ドイツの鍵盤楽器教授に見る鍵盤楽器奏者の多様性とその史的展開
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24720057
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
小野 亮祐 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10611189)
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Keywords | 鍵盤楽器教授 / ドイツ / 教則本 / ピアノ / オルガン / 教員養成所(Lehrerseminar) |
Research Abstract |
今年度は2度ドイツの渡航調査を行った。前年度に調査先の都合でできなかった教則本の調査(主にライプツィヒ、ベルリン、ドレスデン)および、当初から今年度に予定されていた18世紀~19世紀ドイツにおける音楽教育機関の音楽教授記録の調査を実施した。具体的には、ライプツィヒのトーマス教会付属学校(Thomasschule)における記録、ドレスデンの教員養成所(Lehrerseminar)における音楽教授、デッサウにおける音楽教授所(Musikschule)における記録を調査・収集できた。目下これらの資料の分析を進めているところであるが、デッサウのものについては、すでに日本とドイツの音楽教授との関係を論じた論考の中で公表できた。 また、教則本の調査ではピアノ、オルガン、また通奏低音の教則本を中心に収集を進めた。この調査の一環で『バイエルピアノ教則本(Vorschule im Klavierspiel)』の初版に近い資料を発見した。この史料を用いて、以前より当教則本の初版研究を行っている研究者と共同発表を行い、計画当初の予定にない成果を出すことができた。 18世紀~19世紀の鍵盤楽器教則本を用いて、手のポジション移動を行わない「静かな手Steillstehende Hand」に焦点を当て、鍵盤楽器教授における難易度の考え方の変遷と確立について考察し公表した。 前述したが、オルガン教授を中心にドイツと日本における鍵盤楽器の教授関係に関する論考を行った。これは昨年からすでに行っている島崎赤太郎を中心とした研究であるが、本年度の調査で収集した資料により、洋楽導入期(明治期)におけるドイツと日本の音楽教育上の関係をより細かく考察し公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度実施できなかった調査も含め、研究計画当初から予定していた調査が年度内に完遂でき、また研究対象をより絞り込むことができた。また、バイエルに関する予想外の成果を出すことができた。昨年度からかなり研究計画を先取りして行っている日本との関係についても一定の成果を出すことができている。以上のことにより、おおむね順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、今年度の調査を引き続き来年度も行うことにしている。この基本方針については変更の予定はないが、今年度の成果を受けて、以下のように研究方策の軌道修正を行っていきたいと考えている。 今年度の研究成果を受けて、当初の研究計画では漠然としていた調査対象地域を中部ドイツに絞ってゆきたいと考えている。加えて、本研究が対象とする18世紀~19世紀前半は、教員養成所Lehrerseminarの確立とそこでの音楽教授が、当時の音楽教授の大きな部分を占めていることが分かったことから、教員養成所を中心とした調査をこれからも進めてゆきたいと考えている。特に、当時の教員養成所を中心として切実に求められていたオルガン教授に重点を置きつつ、並行するピアノ教授への考察を加えてゆきたいと考えている。また、2度目の調査自体が比較的遅い時期に行われたことから、これらに基づく研究成果は次年度の早い時期に何らかの形で公表したいと考えている。 また、日本とドイツとの音楽教育上の関係を探るために、明治期のオルガン教授で重要な楽器であったハルモニウム(リードオルガン)のドイツにおける教授にも焦点を当ててゆきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既存の設備や、研究者個人の労力で研究を遂行できたということもあり、研究計画を立てた当初ほど人件費・謝金、物品費などがかからなかったことによる。 近年のユーロ高や燃油追加料(航空機)の高騰により、研究計画当初よりもドイツ渡航調査(旅費)に費用が掛かるようになっているため、次年度使用額は旅費として使用したいと考えている。
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