2014 Fiscal Year Research-status Report
18~19世紀ドイツの鍵盤楽器教授に見る鍵盤楽器奏者の多様性とその史的展開
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24720057
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
小野 亮祐 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10611189)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鍵盤楽器教授 / ドイツ / 18世紀 / 19世紀 / 教則本 / 教員養成所 / 国民学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績として、研究結果や途中経過の公表並びに海外調査の成果があげられる。 研究結果や途中経過の公表に関しては、昨年度の調査にて発見したアルテンブルク州立資料館で発見した手書きの鍵盤楽器の教則本(18世紀~19世紀初頭)や、また同時期に家庭で使用されたと思われる楽譜集について、その史料的価値や特徴について学会発表を行った。このことから、従来出版された楽譜でのみ研究がなされ、その陰にあるはずの膨大な量の手書き教本史料の存在の一片が明らかにできた。この研究成果については、今年度中に学会誌や紀要などに掲載する予定である。 また、安田寛奈良教育大学名誉教授と共に共著で、音楽之友社のサイトにて、バイエル教則本の連載を始めている。本研究はバイエル教則本に限るものではないが、安田氏のバイエル教則本研究とわたくしのこれまでの3年間の研究調査成果が合流することにより、バイエルの西洋音楽史上の位置づけや、従来陰に隠れていた西洋音楽史や音楽教育史の一端が明らかになりつつある。 ドイツへの現地調査については、2回を予定していたが本務との都合もあり、少し予定よりも長めに滞在することで1回に抑えた。今年度は研究方策を微修正するところから始めたがその流れで、旧プロイセンの教員養成所並びに国民学校での鍵盤楽器を中心とした音楽教授や、ヴァイマール地域の手書きによる教則本や家庭で使用された手書きの楽譜史料などの収集分析ができた。その研究結果の公表は次年度行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
手書きの教則本や、家庭で教育的な目的で使用された楽譜を発掘し、その分析を行うことで、従来の出版された楽譜を中心に行われてきたこの種の研究に対し、さらなる鍵盤楽器教授の多様性をつまびらかにしつつある。その点では、内容的に今年度より軌道修正を行ったものの、当初の研究目的である鍵盤楽器教授の多様性の発見は達成されつつあると考える。 また、前述したとおり昨年度より、バイエル研究との融合がおこなわれ、2年目となった今年度もさらなる発展があった。この点は、研究開始時の計画を超える研究成果である。 また、日本とドイツとの関係も研究計画の一つに入っており、今年度はリードオルガンの教本を軸に調査を進める予定であったが、時間の都合でできなかった。この点より完全に順調とはいえないと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究方策を引き継ぎ、教員養成所や手書きの教則本類の発掘に努め、あらたな音楽教授像を歴史的に解明してゆきたい。なお、調査地域を中部ドイツに絞るとしていたが、今年度の調査で広く調査を行う方が研究上の意義も高いことが分かったので、この限定は若干解除したい。また安田氏とのバイエル研究も積極的に推進し、当初に予測していた以上の成果を出せるよう努める次第である。 当初の研究計画では最終年度に18~9世紀の雑誌記事を調査することにしていた。特に現在考えているのは、当時の雑誌記事に書かれた教育的な記事と、求人広告である。特に後者は当時の職業音楽家にどのような能力が必要とされていたのかが如実に表れており、ここに注目する予定である。 また、リードオルガンの教本や関係する資料の収集調査も同時に行ってゆきたい。 可能であれば4年間の研究成果をもとにレクチャーコンサートを行いたい。
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Causes of Carryover |
2回予定していたドイツ渡航を1回としたこと、物品や謝金が予定よりもかからなかったことが理由として挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はドイツ渡航を2回し、また本研究をもとにしたレクチャーコンサートをする予定としており、それらの不足分に充てるつもりである。
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