2012 Fiscal Year Research-status Report
クリスチャン・マークレイ研究―サウンド・アートの系譜学
Project/Area Number |
24720066
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中川 克志 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (20464208)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サウンド・アート / 聴覚文化研究 / 現代美術 / 実験音楽 / 現代音楽 |
Research Abstract |
本研究の目的は、三つの領域からアプローチすることでサウンドアートの系譜を学的に提示することである。研究初年度である平成24年度は、それぞれの領域において予備考察と事例調査を積み重ねることで、本研究の基本的な視点を確立させた。現代音楽研究においては「現代音楽」の状況論的観察を整備し、サウンドアート研究においては事例調査を進捗させ、聴覚文化研究においては理論的研究を進展させた。以下、研究計画書に記載された研究計画・方法の項目別に列挙する。 1.現代音楽研究からのアプローチ:現代音楽の今日的意義について状況的に考察する基本的視点を確立した。現代音楽という文化実践の限界を示した論考と、視覚芸術と比較した論考は、現代音楽研究の領域からサウンドアートの系譜について考察するための予備考察となる。また、現代における音響芸術の状況を研究者や芸術家との対話を通じて考察するセミナー(横浜都市文化ラボ主催)を担当し、20世紀の現代音楽や今日の様々な音響実践について議論を行なった。 2.サウンド・アート研究からのアプローチに基づく研究:ドイツのZKMで開催されたサウンド・アート展覧会の実地調査と、一昨年から継続している「日本におけるサウンドアートの展開」の調査を行なった。前者はサウンドアートを初めて包括的に取り扱った展覧会で、サウンドアートの分類可能性に示唆を与えてくれた。また、「日本におけるサウンドアートの展開」の調査では、80年代後半にその萌芽が見られることが判明した。 3.聴覚文化研究からのアプローチに基づく研究:大正期日本における音響メディアの受容状況を調査した論文を公表した。また、聴覚文化研究の基礎文献として重要なジョナサン・スターン『聞こえる過去』の共同翻訳を始動させ、音響メディア史を文化論的観点から扱った著作(いずれも出版予定あり)の共同執筆作業も順調に進捗している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、現代音楽の状況論的考察と、サウンドアート研究における事例調査に集中したので、そもそも予定していた、視覚美術と音響芸術双方の文脈を重視したうえでの作家研究まで進めなかった。この理由は、2012年はジョン・ケージ生誕100周年だったため現代音楽について考察するうってつけの年であり、また、たまたまこの2012年にサウンドアートを初めて包括的に取り扱う展覧会が開催されたからであり(開催は研究課題採択後に発表された)、そのため、初めの研究計画に記載した一年目の計画と二年目の計画を少し入れ替えたからである。具体的には、二年目に予定していた基礎的調査を一年目に前倒しして実施した。 ただし、これはあくまでも一年目の計画と二年目の計画を入れ替えただけであり、三年間全体の計画には大きく影響しない。この計画変更のお陰で、現代音楽研究とサウンドアート研究からのアプローチの双方を行う基盤を整備することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目以降も継続して、現代音楽研究、サウンドアート研究、聴覚文化研究における主要文献の収集と調査を行い、それぞれの領域における具体的な事例調査を行う。また、【現在までの達成度】で説明したように、一年目は、二年目以降に実施予定だった基礎的研究を集中して行なった。なので二年目以降は、現代音楽研究、サウンドアート研究、聴覚文化研究の三領域からアプローチして、具体的にサウンドアートの系譜を記述する作業に着手する。とりわけ、一年目には不足していた、視覚美術との関連性に関する基礎的調査を踏まえたうえで、サウンドアートの系譜学と分類学を実施していく計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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