2013 Fiscal Year Research-status Report
クリスチャン・マークレイ研究―サウンド・アートの系譜学
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24720066
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
中川 克志 横浜国立大学, 都市イノベーション研究院, 准教授 (20464208)
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Keywords | サウンド・アート / 聴覚文化研究 / 現代美術 / 実験音楽 / 現代音楽 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代音楽研究とサウンド・アート研究と聴覚文化研究という三つの領域からアプローチすることでサウンド・アートの系譜を学的に提示することである。研究一年目の平成24年度は、現代音楽研究とサウンド・アート研究と聴覚文化研究のそれぞれの領域において予備考察と事例調査を積み重ねることで、本研究の基本的な視点を確立させた。研究二年目の平成25年度は、昨年度の反省を踏まえて修正した研究計画に基づき、サウンド・アート研究に力点を置き、視覚美術と音響芸術双方の文脈を重視したうえでの作家研究を目指した。以下、平成25年度の研究調査内容とその成果を列挙しておく。最初の三つはサウンド・アート研究の成果で、4番目は聴覚文化論研究の成果である。 1.ニュー・ヨーク公共図書館のアーカイヴ調査を通じて、80年代における「サウンド・アート」というジャンルの発展プロセスを研究した。資料調査を通じて、「サウンド・アート」という言葉は80年代初頭に公共の場で使われ始め、本研究の主題であるクリスチャン・マークレイはそこに数年遅れで参加し始めた芸術家であることが判明した。 2.触覚美学研究会でサウンド・アートにおける触覚について発表する機会を利用し、サウンド・アートの歴史の包括的な概観を試みた。 3.三年前から継続している「日本におけるサウンド・アートの展開」の調査では、日本におけるサウンド・アートの展覧会の最初期の事例を検討し、日本におけるサウンド・アートの歴史の概観の端緒を得た。 4.昨年から継続している共同翻訳と共著の執筆が完成しつつある。聴覚文化研究の基礎文献として重要なジョナサン・スターン『聞こえる過去』の共同翻訳と、音響メディア史を文化論的観点から扱った著作がいずれも今年度の後半には出版予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は、昨年度の反省を踏まえて修正した研究計画に基づき、視覚美術と音響芸術双方の文脈を重視したうえでのサウンド・アート研究に力点を置き、サウンド・アートの歴史の包括的な概観を行う端緒に立った。しかし、本研究の主題であるクリスチャン・マークレイという個別作家の作家研究にまでいたらなかった。とはいえ、当初は平成26年度に進捗させる予定だった聴覚文化研究を、共同翻訳と共著執筆というかたちで大幅に前進させることができたので、三年間全体の計画に大きくは影響しない。最終的に研究成果を「サウンド・アートの系譜学」に貢献するものとしてとりまとめすることは可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの達成度】で説明したように、平成25年度の進捗状況の遅れは、NYで行なったアーカイヴ調査で作家の資料が見つけられなかったことが原因なので、平成26年度は、MOMAアーカイヴを集中的に調査することでマークレイの作家研究に資する資料発掘を期したい。とはいえ、当初は平成26年度に進捗させる予定だった聴覚文化研究は平成25年度に(共同翻訳と共著執筆というかたちで)大幅に前進させている。それゆえ、最終的な研究目的はあまり変更せず、現代音楽研究とサウンド・アート研究と聴覚文化研究という三つの領域からの知見を総合し、サウンド・アートの系譜学と分類学を実施していく。
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