2012 Fiscal Year Research-status Report
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24720072
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanazawa College of Art |
Principal Investigator |
根来 貴成 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 講師 (30623128)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ホスピタリティーアート / 病院 / 待ち時間 / 椅子 / くつろぎ、癒し / 快適さ、機能美、美しさ / 国際情報交換 / イタリア |
Research Abstract |
本研究は、「ホスピタリティー・アート」の観点から病院の待合の椅子に焦点を当て「病院の待ち時間を有効に過ごせる椅子」をテーマに調査を行い、1/1プロトタイプを制作し新たなデザインの探求を行うものである。これらの椅子は、患者やその家族が診察を待っている間、くつろぎや癒しを通して待ち時間を楽しむことができる。機能性だけではなく、形や色、サイズの工夫によっても患者のストレスや不安が軽減される。この内容を日本だけではなく世界に発信し、どのような評価が得られるのかを人気投票やアンケート調査を行った。 当該年度は、準備研究で制作した1/1プロトタイプをイタリアのミラノで開催された国際家具見本市に「Hospitality Chairs」として出展した。アンケートの結果から共通して評価が高かったのは、ストレッチ性の張り材を用いた幕面の曲面が美しい椅子であった。どのような座り心地なのか座ってみたいと思わせる形とその予想を上回る快適な座り心地が評価されたと思われる。また、本や雑誌、鞄や杖の置き場を考慮した機能を美しい形にまとめた椅子も高く評価された。日本では評価の高かった格子をモチーフに用いた椅子は欧州ではあまり評価はされなかった。意外だったのが、日本での評価が低かったシャープでエッジの効いた形の椅子が、欧州ではジオメトリックな形が美しいと評価されたことである。国民性や文化の違いによる造形の好みの差もあるということが分かった。 この内容をもとに再度1/1プロトタイプの制作を行った。今回は椅子が試用される場所を病室や談話室、産婦人科や小児科などに広げ専門性を付加することで、より明確な椅子のデザインに繋がった。試用場所や目的が明確であり、機能と造形のバランスが美しくまとめられている椅子が評価された。この活動によって医療分野における製品デザインの新たな可能性に手応えを感じることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年4月17日~22日の6日間、イタリアのミラノで開催された国際家具見本市会場に椅子の1/1プロトタイプ18脚を展示し、来場者にプレゼンテーションをおこない人気投票やアンケート調査を行った。出展準備では、会場のレギュレーションの確認や荷物の輸送、英語でのプレスキットなど多くの項目をクリアーしなければならなかったが、様々な人々の支えのおかげで無事本番を迎えることができた。会期中は2日目で1000枚作ったリーフレットがなくなってしまうほど大盛況だった。 欧州では「Hospitality Chairs」で紹介し、「おもてなしの椅子」という広いイメージで共感してもらうことができた。 「ホスピタリティー」の語源でもある「もてなす」という、相手の立場に立ってデザインした椅子は、人間が内外ともにデリケートな状態にある病院空間で、癒しや楽しみを能動的に体感して内面から元気になってもらえることが分かった。 このデザインアプローチによって生まれる椅子は、その他のパブリック空間にも展開しやすく、海外でも共感を得やすいことが分かった。また、海外の学生たちにも大変興味を持ってもらえた。展示会に参加した学生達は、自分の考えを伝えることの大切さを実感していた。この活動によって医療分野における製品デザインの新たな可能性とデザイン教育への発展に手応えを感じることができた。 そして、この内容をもとに、再度1/1プロトタイプの制作を行い、より明確な椅子のデザインの探求を行った。さらに、その結果を病院や学会などで発表展示をすることができた。また、音楽堂ロビーの待合椅子として展示を依頼され、この取り組みに共感してもらうことができた。予想される結果の一つとして考えていた、本研究課題が病院だけに関わらず、公共空間での「待ち時間」を必要とする環境で試用される椅子への応用が可能であることを実証することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、準備研究と当該年度で制作した1/1プロトタイプの椅子の評価をまとめ家具メーカーへのプレゼンテーションを行い、製品化の可能性を検討していく。具体的には、(株)岡村製作所にプレゼンテーションを行い、製品化の可能なものについて検討を行う。 1、製品の市場性やコストの妥当性についてマーケティング部との打ち合わせを行う。 2、コスト面や安全性、生産性などを考慮し設計部と打ち合わせをし量産試作を行う。 3、協力機関である金沢市立病院で実際に試用し検証とアンケート調査を行い、試作に反映させる。 4、(株)岡村製作所の工場にて量産品の強度試験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度繰越金としての、446,022円は当初、期日内に検証記録などの機材や資料を収納するための什器やプロトタイプ制作や製品化検討の為のサンプルの購入を検討していた。 しかし、新機種発売や納品日のタイミングが合わず、次年度支給の500,000円と合わせて、25年度研究経費のプレゼンテーション機材等の備品費や材料費などの消耗品費、旅費などと合わせて使用する予定である。
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