2013 Fiscal Year Research-status Report
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24720072
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Research Institution | Kanazawa College of Art |
Principal Investigator |
根来 貴成 金沢美術工芸大学, 美術工芸学部, 准教授 (30623128)
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Keywords | ホスピタリティーアート・プロジェクト / 待合空間 / 病院と音楽堂 / 美しい造形の椅子 / くつろぎと癒し / ホスピタリティーラウンジ・プロジェクト / 音楽性と融合 / 公共空間 |
Research Abstract |
当該年度は、椅子のデザインのさらなる可能性を探るため、くつろぎや癒しの観点から音楽性をテーマに取り入れることを試みた。実験的に石川県立音楽堂コンサートホールの待合空間に「ホスピタリティーアート・プロジェクト」で取り組んだ椅子の1/1プロトタイプ約40脚とパネル、制作記録の画像を「Hospitality Chairs」として展示しアンケート調査を行った。 その結果、これらの椅子が、演奏会が始まる前の緊張感を和らげたり、演奏会後の感動を分かち合えるような会話が弾む椅子に繋がることが分かった。人気投票では、病院と音楽堂で行った結果の上位がほぼ同じ内容なった。機能の他に、その椅子の形状や試用時の示唆を通して感じられるくつろぎや癒しなどが、人間の興味を引く共通点であることが推測できる。 そこで、今回は「ホスピタリティーラウンジ・プロジェクト」として音楽堂をテーマに椅子のデザインを行った。音楽堂職員や利用者にアンケート調査やアドバイスをもらいながらアイデアを広げ、1/1プロトタイプを制作し検証を行った。その結果、医療分野で得たノウハウと音楽性が融合した美しい造形で座りやすい椅子が多くの誕生した。また、これらの椅子も実際に音楽堂と病院に展示した結果、上位がほぼ同じ内容なった。その他、銀行の待合空間でも展示を行い人気投票を行ったが、結果が病院や音楽堂で行った結果と上位がほぼ同じになった。 これらのことから公共空間では、人間を取り巻く緊張が椅子の機能だけでなく、形状やサイズ、色、試用時の示唆などを通して和らげられ、くつろぎや癒し、安全にリラックスできる状態を求める傾向があると思われる。これらの内容を生かして今後も待合空間における椅子の可能性を広げていきたいと思う。また、この活動によって公共空間における製品デザインの新たな可能性と教育への発展に手応えを感じることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年4月17日~22日の6日間、イタリアのミラノで開催された国際家具見本市会場に椅子の1/1プロトタイプ18脚を展示し、来場者にプレゼンテーションをおこない人気投票やアンケート調査を行った。欧州では「Hospitality Chairs」で紹介し、「おもてなしの椅子」という広いイメージで共感してもらうことができた。 「ホスピタリティー」の語源でもある「もてなす」という、相手の立場に立ってデザインした椅子は、人間が内外ともにデリケートな状態にある病院空間で、癒しや楽しみを能動的に体感して内面から元気になってもらえることが分かった。このデザインアプローチによって生まれる椅子は、その他のパブリック空間にも展開しやすく、海外でも共感を得やすいことが分かった。 2013年度は、この内容をもとに、再度1/1プロトタイプの制作を行い、試用する場所を明確にして椅子のデザインの探求を行った。その結果を病院や学会などで発表展示をすることができ好評であった。 2014年度は、待合空間の椅子のデザインの可能性を探るため、くつろぎや癒しの観点から音楽堂での試用に展開にした。音楽性を融合することで美しい造形が生まれ、「Hospitality Chairs」の質を上げることができた。また、銀行の待合椅子としても展示を依頼され、この取り組みに共感してもらうことができた。予想される結果として考えていた、本研究課題が病院だけに関わらず、公共空間での「待ち時間」を必要とする環境で試用される椅子への応用の可能性を実証することができた。 実用化に向けては家具メーカーとの話が進んでいない。今後家具メーカーに相談し製品化の可能性を検討していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今までに制作した1/1プロトタイプの椅子の評価はまとめたが、実用化に向けて家具メーカーとの話が進んでいない。今後家具メーカーに相談し可能性を検討していく。具体的には、(株)岡村製作所にプレゼンテーションを行い、実用化の可能なものについて検討し、製品化を目指す。また、デザイン教育に還元できるようまとめる。 1.製品の市場性やコストの妥当性についてマーケティング部との打ち合わせを行う。2.コスト面や安全性、生産性などを考慮し設計部と打ち合わせをし試作を行う。3.(株)岡村製作所の工場にて量産品の強度試験を行う。4.(株)岡村製作所が行う新製品展示会に出展し、業界全体に本研究の成果を発表し新聞やテレビからも発信予定。5.量産化に向けての打ち合わせや量産品の確認を行う。6.論文や報告書をまとめる。 課題としては、メーカでの年間開発項目に入れてもらえないと今年度中の製品化は難しくなる可能性がある。
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