2014 Fiscal Year Research-status Report
フランス革命期の演劇における女性像の研究―男装のヒロインの表象と受容の検証
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24720080
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
中山 智子 京都外国語大学, 外国語学部, 准教授 (80434645)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異性装 / 演劇 / フランス革命 / 女性 / フランス / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、国内での調査に加えて、二度にわたってフランス国立図書館、アルスナル図書館、パリ・オペラ座資料室にて資料調査を行い、主としてフランス革命期における特徴的な上演演目の分析、男装のヒロインを持つ戯曲の分析および各作品の受容を研究した。 上演演目については、新作以上に革命期以前の旧作が継続して多く上演されていたこと、ジャンルとしては公演回数の半数を喜劇が占め、パントマイムが人気のジャンルとして上位に位置するなど、娯楽的な作品が好まれていたことを確認した。一方で、バスティーユ占拠や王の処刑など同時代の歴史的事件を題材にした作品が多く作られており、社会の動きと劇場が強く結びついていたことを確認した。 研究対象とする戯曲については、作業の効率化を図るためデジタル化されていない作品のパソコン入力を行い、分析を進めた。作品の分析の結果、革命期の男装劇は、革命前と比較するとヒロインの愛国心と家族愛を強調している点が一つの特徴であることが分かった。加えて、フランスでの資料調査で男装のヒロインを持つ戯曲を新たに発見することができた。 また、各作品の受容については、渡仏中、作品の公演回数の調査及び革命期の新聞の劇評、革命期の演劇に関する条例についての公文書記録、舞台衣装についての資料等を調査した。その結果、作品によってはその年の最多の公演回数を誇るなど、大衆の高い人気を得ていたこと、また、男装のヒロインもすでに一流と評価されていた女優に配役されていたことが判明した。 本年度の研究成果の一部について、革命期の歴史的事件を題材とした劇の例として、『国王たちの最後の審判』(マレシャル作、1793年初演)について学会発表を行い、革命期に色濃く残る作劇や上演面での大衆的な喜劇(縁日芝居やイタリア人劇団)の影響と、同時代の歴史的事象の描き方が革命期の演劇を特徴づけていることを発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、フランス革命期にパリで上演された舞台芸術を資料として読み解き、革命期特有のヒロイン像を検証することを最終的な目的としている。平成24、25年度は男装のヒロインを持つ作品の特定とデータベースの構築を、平成26年度は各作品の分析と受容について調査を行ってきた。これまでに特定した作品の分析と受容の研究はおおむね順調に進展しているが、上演作品については平成26年度にも新たな作品が発見できたため、研究対象とする作品数が増加し、加えて公演回数について文献間での食い違いもあり、更なる検証が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、これまでの戯曲の分析に加え、1. 作品中の衣装の考察、2. 劇中使用された音楽の研究、3. 作品の受容の研究を中心に行っていく。 1については、男装のヒロインの作品群の中でとりわけ顕著な存在である女兵士の衣装について、実際の兵士の服装と舞台での表象の関係を、服飾史やジェンダー歴史学などの研究も参照し、考察を深めていく。2の音楽については、演奏家の協力も得て、作品に添えられた楽譜を元に演奏を再現し、音楽によってどのように作品世界が表現されたのか、特にヴォードヴィル(替え歌)部分が劇にどのような効果を与えたのかを分析する。3については、新しく発見した作品について当時の劇評や演劇辞典を参照し、俳優や作者、作品が当時どのように評価されたのかを検証する。 上記の研究を行うため、平素の研究に加え、長期休暇を利用しパリの演劇関係の資料を有する図書館(フランス国立図書館、アルスナル図書館、オペラ座図書館、コメディ=フランセーズ図書館)、およびムーラン市の国立舞台衣装装置センターで調査を行う予定である。また、フランス革命期の演劇を研究する他の研究者と共同で学会等での発表も予定している。 以上の分析結果を総合し、革命期以前の男装のヒロインとの比較を行い、革命期特有のヒロイン像を検証していく。
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Causes of Carryover |
平成24年度に近親者の介護と死去にまつわる事情で予定していたパリでの調査活動が実施できなかったため、旅費が支出できず、その後の年度に繰り越されることとなった。また、平成25年度はインターネット上で公開されている文献の調査に力を入れたことと、フランス革命博物館資料室の利用と文献複写が無料で行うことができたため、研究資料の購入等に関する支出が少なかったため、次年度使用額が生じた。平成26年度の研究にかかる支出は予定どおりであった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度のフランスでの調査の結果、参照すべき研究書や図録集が新たに多数確認できたため、資料の購入を行う。また、研究のため、オペラ・コミック等、音楽を伴う作品の音楽部分の演奏・録音を演奏家に依頼する予定であり、その謝金として次年度使用額から支出する予定である。加えて、パリの複数の演劇関係の図書館、及びフランス国立舞台衣装装置センター(オーベルニュ地方ムーラン市)で、これまでより長期の資料調査を行う予定のため、滞在費及び資料調査に係わる費用として次年度使用額を使う予定である。
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Research Products
(2 results)