2015 Fiscal Year Research-status Report
フランス革命期の演劇における女性像の研究―男装のヒロインの表象と受容の検証
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24720080
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
中山 智子 京都外国語大学, 外国語学部, 准教授 (80434645)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異性装 / 演劇 / フランス革命 / 女性 / フランス / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、国内とフランスでの資料調査、作品分析、音楽資料の分析と演奏録音、学内主要学会での発表、論文作成を行い、フランス革命期の男装のヒロイン像について明確な定義を行うことができた。 資料調査については、専修大学図書館(ベルンシュタイン文庫)の貴重書閲覧によって、革命期のパリの劇場の上演記録と劇場関係者のリスト等を詳細に調べ、上演がどのような規模で行われたのかと分析した。加えてフランス国立図書館(新館・旧館)では、劇作品に用いられた音楽面からの分析資料として、主として革命期の式典や祝祭の変遷と革命歌の歌詞と楽譜を調査した。 これらの資料調査を踏まえ、男装のヒロインの中でも革命期に特徴的な女兵士をヒロインとした作品について詳細な作品分析を行った。 その結果として、女兵士をヒロインとする劇は、男女を問わず国民的な愛国心の高まりと、実際に従軍し功績をなした女性兵士たちの存在を社会的背景として生まれたものであることが確認できた。一方で、女性の従軍は風紀を乱すなどの理由から禁止されていった歴史的流れも劇作品に反映されており、結末としてヒロインが軍を辞め家庭に戻るなど娘・妻・母としての女性像の賛美も見受けられることが分かった。また、当時専門劇場ができるほど人気を博したヴォードヴィル劇には革命歌が多く用いられ、観客に舞台と現実社会との関連を強く喚起すると同時に、ヒロインに革命期の英雄のイメージを与える要素にもなっていることが分かった。 これらの研究成果の一部について、フランス文学学会の革命期の演劇についてのワークショップでの発表(仏語)と論文作成を行い、さらに2016年5月末のヴォードヴィル劇についての国際的な研究集会(於:カナダ国カルガリー大学)においても発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、フランス革命期にパリで上演された舞台芸術を資料として読み解き、革命期特有のヒロイン像を検証することを最終的な目的としている。平成24、25年度は男装のヒロインを持つ作品の特定とデータベースの構築を、平成26年度は各作品の分析と受容について調査を行ってきた。平成27年度は、特に男装のヒロインの歴史的・社会的背景と劇中使用された音楽について研究を行った。パリでの資料調査によって作品内で重要な場面で使われた革命歌の楽譜を発見することができ、日本とフランスで演奏家の協力を得て、当時の楽譜を元に革命歌を再現することが可能となったため、作品の分析を順調に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、これまでの戯曲の分析に加え、1. 歴史的背景の更なる考察、2. 劇中使用された音楽の研究、3. 作品の上演と受容の研究を中心に行っていく。 1は、革命期の女性像について歴史的・社会的資料を参照し、女性の男装が社会的にどのように受け止められたのかについて考察を深めていく。2の音楽については、引き続き演奏家の協力も仰ぎ、特に劇中に用いられた革命歌がヒロイン像の構築にどのような効果を与えたのかを分析する。3については、作品の上演が当時どのように評価されたのかを検証する。これらの研究を行うため、国内外の図書館で資料調査を行う。 以上の分析結果を総合し、革命期以前の男装のヒロインとの比較を行い、革命期特有のヒロイン像を検証していく。平成28年度は研究の最終年度として、論文執筆および海外での学会発表により研究成果を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
平成24年度に近親者の死去により予定していたパリでの調査活動が実施できなかったため、旅費が支出されず、その後の年度に繰り越されることとなった。また、平成25年度はフランスでのフランス革命博物館資料室の利用、文献複写費、宿舎滞在費がフランスの研究者への助成制度により無料であったため、支出される費用が予定より少なくなった。平成26年度、27年度の研究にかかる支出は予定通りであった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず平成27年度の研究成果の発表として、平成28年5月末の国際的な研究集会(於:カナダ国カルガリー大学)参加のための大会費と旅費として使用する予定である。また、フランス革命期の革命歌と女性像についての歴史的資料の収集のため、フランスでの資料調査に関わる費用が必要である。加えて、革命期の楽譜を分析し革命歌の演奏を再現するため、演奏家への研究協力への謝金も必要としている。
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Research Products
(3 results)