2013 Fiscal Year Research-status Report
映画史および映像理論における「不動性」の系譜をめぐる研究
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24720081
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
堀 潤之 関西大学, 文学部, 准教授 (80388412)
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Keywords | 映画と写真 / ベルール / マノヴィッチ / ニューメディア / トリュフォー |
Research Abstract |
(A)不動性をめぐる映像理論小史、(B)不動性の映画史、(C)現代美術の映像作品における運動と不動という本研究の三本柱のうち、前年度同様、(B)および(C)を中心に研究を進めた。 (B)に関しては、フランソワ・トリュフォ ーの全作品を対象として、頻出する「写真」のモチーフを映画・フェティシズム・死の3点からとらえた論文が刊行された ("Truffaut and the Photographic: Cinema, Fetishism, Death")。また、写真と映画の交錯を考えるときに外すことのできないフランスの映像作家クリス・マルケルについての総合的な研究にも着手し、特に彼の東アジアへの旅から生まれた映画作品および写真集の分析を行った(「クリス・マルケルの日本への旅」、および『越境の映画史』所収の論文「「東洋」から遠く離れて――クリス・マルケルによる中国・北朝鮮・日本」)。 (C)に関しては、1990年代以降、動画像を使用する作品が現代美術の領域で急増したという状況に対する理論的な言説のいくつかを読解・整理した。その具体的な成果として、レイモン・ベルールの近年の仕事についての解説文を執筆したほか(次年度に公表予定)、ニューメディア研究の代表的な成果であるレフ・マノヴィッチの『ニューメディアの言語』を翻訳・刊行した(みすず書房、2013年9月)。 (A)に関しても、今年度中に成果を出すには至らなかったものの、(C)との関連も考慮しつつ、この問題をめぐる重要な研究者の一人であるベルールの理論的著作の読解を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を刊行するという観点からは、 (A)不動性をめぐる映像理論小史の研究の進展がやや遅れているものの、(B)不動性の映画史に関してはまとまったトリュフォー論とマルケル論を公表し、また(C)現代美術の映像作品における運動と不動についてもマノヴィッチの『ニューメディアの言語』という大部の翻訳を完成させるとともに、ベルールの近年の仕事をめぐる言説の布置を確認するなど、予定以上に進展しているため、総合的にはおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)不動性をめぐる映像理論小史の進展がやや遅れているため、今後の研究において挽回する予定である。当初の研究計画では、年度ごとに(A)、(B)、(C)それぞれの小課題に取り組み、最終年度に総まとめを行う予定だったが、実際に研究に着手すると(A)、(B)、(C)は密接に関連し合っていることが分かったため、(A)に重点を置きつつ、(B)、(C)の研究も同時並行で行う。 また、平成24年度、25年度に行わなかった海外視察に関して、平成26年度に実施する見通しが立っている。具体的には、パリで開催されるアンリ・ラングロワ展、ダグラス・ゴードン展などを中心に、特に(C)に関連する調査を行う予定である。
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