2013 Fiscal Year Research-status Report
1900-30年代フランスの美術と建築における軸測投影に関する総合的研究
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24720086
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Research Institution | The National Museum of Modern Art, Tokyo |
Principal Investigator |
米田 尚輝 独立行政法人国立美術館東京国立近代美術館, その他部局等, 研究員 (50601019)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
研究代表者は、前年度の平成24年度にニューヨーク近代美術館において調査・資料収集を遂行したが、平成25年度はその在外調査の際に収集した資料体を網羅的かつ精密に読解すること、そしてそれらを体系的にまとめて論文として発表することに専心した。また前年度の在外調査期間中、平成24年12月から平成25年4月にかけてニューヨーク近代美術館においてLeah Dickermanが企画した展覧会「Inventing Abstraction 1910-1925」、およびその展覧会カタログは、ヨーロッパにおける抽象絵画の展開を多角的に俯瞰したものであり、本研究の展開に大きな示唆を与えるものであった。その成果は、以下の論文としてまとめることができた。「モンドリアンとファン・ドゥースブルフのグラフィック・イメージ」、『引込線2013』、引込線2013実行委員会、2013年、207-218ページ。この論文では、オランダの美術家ピート・モンドリアンとテオ・ファン・ドゥースブルフの1910-20年代にかけての作品を中心的に扱い、軸測投影の現れ方に主眼を置きながら、二人の絵画作品およびその言説における関連を論じた。キュビスムから抽象絵画への過渡期という同時代のフランスにおける芸術状況の中で、モンドリアンとファン・ドゥースブルフの建築と絵画における緊張関係を分析し、デ・ステイルにおける諸芸術ジャンルにおける建築的要素の介入を明確化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、スイス人の建築家ル・コルビュジエの建築および絵画の仕事を、同時期に勃興していた前衛芸術運動、とりわけフランスのキュビスムとオランダのデ・ステイルとの関連のうちで位置づけ直すことであった。平成24年度には、軸測投影の歴史を建築史の文脈において美学的側面を重視しつつ18世紀から20世紀初頭にいたるまで跡付けること、そして軸測投影の使用をル・コルビュジエの1900-1930年代の仕事から体系的に抽出することができた。この研究成果を踏まえて、平成25年度には、オランダの前衛芸術運動デ・ステイルの作品における軸測投影の現れ方を分析した。主な分析の対象となったのはピート・モンドリアンおよびテオ・ファン・ドゥースブルフの1910-1920年代を中心とした絵画作品である。先行研究においては、デ・ステイルという芸術運動に参加していた二人の関係は、絵画における美的価値基準の相違によって袂を分かったと考えれてきた。しかしながら、そこには絵画と建築という諸芸術ジャンルの優位論的議論が介入しており、その要点にあるのが軸測投影の美的効果であったことを提示した。したがって、予定していた研究目的の詳細な軌道とはわずかに異なった道筋をたどりつつも、予想していなかった側面に気づかされながら、それらを研究成果に反映することができており、本研究の目的は、これまでのところ順調に達成してきていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はヨーロッパへの在外調査を予定しており、パリのル・コルビュジエ財団を中心とした研究機関で調査・資料収集を遂行したいと考えている。また、平成24年度、平成25年度における調査結果から、本研究にとって、スイスの美術家ゾフィー・トイバー=アルプの仕事を体系的に整理しておく必要が生じた。したがって、ル・コルビュジエ財団とともに、パリのアルプ財団においても集中的な調査を行う予定である。過去二年間の研究成果としては、ル・コルビュジエを中心としたフランスの建築家たちと、オランダのデ・ステイルにおける軸測投影の現れ方を提出した。これに加えて、これまで建築史の研究領域においては言及されることが少なく、むしろダダ運動の文脈において扱われることの多かったゾフィー=トイバーの仕事を調査し、彼女の活動を建築史の文脈においても位置づけることを目標としている。こうすることで、より多様な視点からの分析を加えることができるとともに、20世紀初頭のフランスにおける軸測投影の顕現を複数の文脈において確認することができると考えている。その調査結果を基盤として、本研究の最終年度である本年度は、上記の在外調査で収集した資料体を精緻に読解する作業を遂行するともに、その成果を論文ないしは書籍のかたちで発表することを目標としている。また、それにともなって、資料の整理や論文の執筆に際して必要とされるパソコンおよびその周辺機器等の機材を導入する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に予定していた在外調査を、次年度に行うことにしたためである。これは、資料の収集が予想よりもはかどり、当該年度は成果として発表する論文の執筆に時間を費やしたためである。次年度には、当該年度に予定していた在外調査を遂行する予定である。 上記のように、当該年度に予定した在外調査を、次年度に遂行する。
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