2013 Fiscal Year Research-status Report
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24720090
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山本 啓介 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (50601837)
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Keywords | 室町和歌 / 和歌会 / 月次和歌 / 御会始 / 談合 / 公宴続歌 / 後柏原天皇 / 三条西実隆 |
Research Abstract |
本年は四年計画の第二年次にあたる。古記録の分析を中心とした室町期における和歌会の諸相の解明と、それを踏まえた上での作品研究を目的とした研究を進めた。 その具体的成果として、次の二編の論文を発表した。①「後柏原天皇時代の内裏和歌活動について―時代背景と形式―」(「日本文学」62・9、2013年09月)では、後柏原天皇時代には参会・披講を伴う晴儀の御会始が行われていたが、その内実は不参の者も少なくなかったことを指摘した。その一因は貴族達の困窮にあったと見られる。また後柏原天皇歌壇で行われていた月次和歌の日程や手順等を明らかにした。内裏月次和歌は、懐紙・短冊に和歌を書いて提出する参会・披講を伴わないものであり、動乱期の状況下でも少ない負担で和歌活動を継続することが可能な形式であったことを論じた。②「後柏原天皇時代の内裏月次和歌―作風と「談合」―」(「和歌文学研究」、107号、2013年12月)では、同時代の内裏月次和歌の内実と作品分析を併せて行い、月次和歌の作者達はほぼ固定化された緊密な交流を持つ面々で構成されており、月次短冊和歌では穏当ながらも先行例の見出せない表現が少なからず詠まれていること、月次懐紙和歌においては全員が同題を詠むため、類似の作が多くなるはずであるが、個々の作を比較するとそれぞれの相違が目に付くことを指摘した。そうした月次和歌の作風と、彼らが詠進の前後にしばしば「談合」を行い、相互の作を念頭に置きながら詠作を行っていたこととの関わりを考察した。 以上の考証の結果、室町前期の内裏和歌活動の実態の一面が明らかとなり、それを踏まえた上での作品分析についての新たな可能性が提示できたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果により、室町前期の後柏原天皇時代における和歌詠作形式の様相の一端が明らかとなり、それを踏まえた上での和歌作品の立体的な読解の可能性も提示し得た点で、本研究の最大目標の一つは相応の達成を見たと言える。また、和歌会部類記に関しても現存資料の大半の調査は既に終えており、それらを分析した成果は次年度中に発表できる見通しである。ただし、これらの古記録の分析・読解に力点を置いたこともあり、「和歌会古記録データベース」「和歌会用語用例データベース」の作成については当初の目標より少なからず遅れが出ている。ただし、次年度以降はこちらにより重点を置くことで当初の目標を達成できる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
既に基礎的な調査を終えている和歌会部類記について、内容分析を進め、これらに記事が抄出された和歌会の記事に関して通史的に整理を行う。併せて部類記のみにしか伝わらない記事・和歌について適宜紹介する。また、古記録類の調査を併せて行い、これも通史的に整理し、「和歌会古記録データベース」の基本部分の完成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年3月26日の出張調査のための旅費(13847円)の会計処理が、年度末であったために2014年4月に行われたため。 上記の通り、既に使用済み。
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Research Products
(3 results)