2012 Fiscal Year Research-status Report
引用人名・書名より見る『黄氏口義』の学史・文化史的意義
Project/Area Number |
24720095
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蔦 清行 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 准教授 (20452477)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 抄物 / 日本の学史(学問史) / 五山文学 / 禅僧の研究 |
Research Abstract |
本課題では、『黄氏口義』に引用されている禅僧・内外の書籍・およびそれに登場する人物の、網羅的な索引を作成することを、目標としている。人名・書名索引を作成し、本資料が学史的・文化史的にどのように位置づけられるか明らかにすることが、本研究の目的である。それはまた、本資料が言語資料としてだけでなく、文化的な資料としても活用しうるようにもすることになるであろう。 以上の「研究の目的」に基づき、当初段階では次の1~4のような研究実施計画を策定した。1,収集対象の画定→2,全巻にわたる用例の収集・データベース化(以上平成二十四年度)→3,異なる名前で記された同一人物・同一書目の名寄せ→4,索引・研究報告の発表(以上平成二十五年度) その研究実施計画にもとづく平成二十四年度の研究実績の概要を報告する。全体としては、やや遅れはあるものの、順調に作業を進めているところである。1,の「収集対象の画定」に関しては既に方針を決め、実際の用例の収集、データベース化に着手したところである。 どのような書名・人名が引用されてきたかという点については、これまでも研究が存在しなかったわけではないが、それはあくまでも総論的な記述であって、実際にどこにどのように現れるかというところまで踏み込んだ研究は存在しない。しかしそのような情報は、テクストの当該の場所にたどり着いて初めて意味を持つという側面を持つ。それゆえ、本課題で作成しつつあるような索引が一つでもできることは、今後の抄物研究、ひいては中世学問研究の分野において、研究の方法の転換およびその方法を可能にする工具を提供するという意味で、一つの画期をなす重要な意味を持つと言えよう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」でも記したように、研究全体は、「研究の目的」に基づいた、次のような研究実施計画を策定して推進している。1,収集対象の画定→2,全巻にわたる用例の収集・データベース化(以上平成二十四年度)→3,異なる名前で記された同一人物・同一書目の名寄せ→4,索引・研究報告の発表(以上平成二十五年度) このうち、平成二十四年度に実施する予定であった1,収集対象の画定と2,全巻にわたる用例の収集・データベース化については、作業を進めているところである。2,の「全巻にわたる用例の収集・データベース化」については、できれば平成二十四年中に作業を終了させたかったところであるが、これも本年度の前半中には完了する見込みであり、遅れはごく軽微なものであって、おおむね順調に進展していると判断する。 その軽微な遅れの原因となったのは、適当なアルバイトを雇用するのにやや時間がかかったことである。また、雇用した研究者はこのような古典籍の取り扱いに習熟してはいたものの、本課題で扱う資料は字体も独特である上、登場する人名・書名にも独自の省略呼称が頻出する。それに習熟する必要があったということも一つの大きな理由である。 ただし、そのようなアルバイトの雇用の問題、およびその習熟の問題に関しては既に解決済みであり、今年度は問題になることはないはずである。当初の予定を変更することなく、平成二十五年度末における人名・書名索引の完成を目指し、(遅れを取り戻すために前期の作業量を少し増やすことにはなるが)計画にもとづいて研究を実施してゆくことにする。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記「研究実績の概要」でも記したように、本課題では、『黄氏口義』に引用されている禅僧・内外の書籍・およびそれに登場する人物の、網羅的な索引を作成することを、目標としている。平成二十五年度は、本課題の最終年度であるから、これまで集められたデータを集計し、一つにまとめて公開するところまで進めたい。 また、本研究の意義は、文化的な資料として活用する基盤を整えるところにあると位置づけられる。従って、単にモノとしての索引を整えるだけでなく、それを利用できる環境および簡単な手引きを用意することも必要になると思われる。そのため、完成した索引を利用して、当該資料の学史的・文化史的位置づけを明らかにする研究報告を執筆する予定である。 具体的には、この研究報告は、当該資料に引用される禅僧名・書名等が、同時代の他資料と比較して、どのように共通し、どのように異なるのかを明らかにすることを目指す。またそれによって、本資料がどのような研究分野にとって有用なものとなりうるのか、検討する。索引は、国語学国文学の研究者にとっては有用性の明らかなものと信ずるが、それ以外の分野、例えば国史学や中国文学・和漢比較文学などの分野の研究者にとっては、必ずしも使途が明確でないであろう。そのような分野の人々にも、索引がどのように利用でき、それを用いてどのようなことを明らかにできるのか、ということを簡潔に紹介したい。 これらは、研究代表者の所属大学の紀要、あるいは所属学会の機関誌に投稿する形で発表し、多くの研究者が利用できることになることが望ましい。しかし、研究報告はともかく、索引については、これだけの頁数のものを掲載することは、ふつう、現実的でない。紙媒体としては研究報告を印刷して関係諸機関に配布することとし、データはインターネットを通じて、何らかの形で広く利用できるようにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|