2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24720097
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
野本 瑠美 島根大学, 法文学部, 講師 (40609187)
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Keywords | 和歌文学 / 百首歌 / 百首和歌 / 奉納和歌 |
Research Abstract |
本研究は、奉納百首を中心に「百首歌」と呼ばれる詠作形態が持つ表現上の特徴の解明を目的とする。奉納百首の詠歌集成や表現分析を通して、百首歌という形態が作品に及ぼす影響を明らかにするため、平成25年度は、以下の4点に基づき、研究を行った。 1.昨年度から引き続き奉納和歌の集成と増補を行った。平安~鎌倉期までの神社参詣の際に詠まれた和歌や奉納された和歌を集成し、「和歌奉納」という行為の実態を資料から考察した。その成果を博士学位論文『中世百首和歌の研究』第二編第一章第一節「奉納和歌とは何か」にまとめた。 2.多人数による奉納百首の始発となった『寿永百首』のうち、『鴨長明集』に着目し、贈答歌と雑部の構成から、奉納のための百首家集編纂の意図を明らかにした。その成果を論文(「『鴨長明集』の贈答歌―寿永百首との比較から―」)として公表し(『島大国文』34号に掲載。印刷所の倒産等により刊行が今年度に遅れた)、前掲学位論文第二編第一章第三節に加筆しまとめた。 3.「天神仮託歌集」のうち、実践女子大学山岸文庫所蔵の『天神百詠』の翻刻と諸本比較等の基礎的研究を行い、その成果を前掲学位論文第二編第二章第二節「実践女子大学山岸文庫蔵『天神百詠』考」にまとめた。 4.奉納百首との比較検討のため、応制百首『久安百首』の長歌を中心に表現分析を行い、帝への奉献の際に見られる述懐性の表出について考察した。その成果を、前掲学位論文第一編第一章第二節「『久安百首』の述懐歌」にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は研究期間の2年目にあたる。前年度までの資料収集と調査を踏まえ、研究論文の執筆にとりかかった。その成果を学位論文『中世百首和歌の研究』にまとめ、東京大学大学院に提出した(学位審査は平成26年度中の予定である)。学位論文の執筆を優先したため、本年度は研究雑誌への投稿や学会発表等ができなかったが、次年度は本年の成果を踏まえ、より広範に研究成果を公開していくことを目指す。よって、研究は予定よりもやや遅れたものの進展はあったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に得られた調査結果を基に、更なる発展を目指す。以下の4点に基づき、詠歌集成、表現分析、時代背景の考察を行っていく。 1.平安期~鎌倉初期の和歌資料を中心に、「和歌奉納」と呼び得る行為と詠歌内容の関連について考察する。前年度までは、「和歌奉納」に関わる和歌の収集と行為の定義について検討してきた。本年は詠歌内容に着目し、奉納の種別によって詠歌内容にどのような変化が生じるのか、奉納和歌に共通する詠みぶりは存在するのか、これまで収集した和歌資料を基に分析を行っていく。 2.前年度から引き続き、奉納百首の集成と原本調査、分析を行い、その成果を報告する。 3.「天神仮託歌集」の諸本調査及び本文研究。諸本の翻刻を行い順次テキストデータ化していく。 4.前年度は『久安百首』の述懐歌を中心に検討し、「長歌」という詠歌形態によって詠作者が「奉献」の意思を明確に表明せざるを得なくなったことを明らかにした。今後は広く、平安期~鎌倉初期にかけての長歌の役割を考察し、「長歌」という形態が詠作者の不遇感の表出や奉献の意思表明に及ぼす影響を明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には、資料収集と調査、研究発表を予定していたが、予定していた調査や研究発表を行えなかったため、旅費の一部を次年度に繰り越した。またデータベースの利用料や資料の購入など、購入の際の割引等を考え次年度に購入を延期した物品もある。 平成26年度は、資料収集や研究発表のための旅費、および図書等の資料購入、論文抜刷の印刷や発送等に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)